福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2012年9月号 月報

北九州部会 ジュニアロースクールのご報告

月報記事

会 員 諸 隈 美 波(64期)

7月28日、北九州部会にてジュニアロースクールが開催されましたのでご報告させていただきます。

今年のテーマは「民事模擬調停」で、対象は小学生(5、6年生)。当日は小学生34人が参加、うち30名くらいの子どもたちを小学校の先生3人が引率してきてくれました。

1 民事模擬調停の内容

今年は、中学校で学ぶ「対立と合意」を少し先取りし、昔話を題材にした模擬民事調停を行いました。「桃太郎エピローグ」と題する昔話を用いて、双方の利害が対立している場面において、双方の言い分を理解し、対立点を明確にし、グループで議論し最終的には利害を調整した妥当な解決案として、調停条項をまとめるというものです。

さて、「桃太郎エピローグ」は、昔話の「桃太郎」の続きの話です。桃太郎は鬼退治をしましたが、実はその島は、以前鬼たちが住んでいた島で、鬼が修行で出ている間に人が住み着いてしまったという渡邊典子先生オリジナル(!)のお話です。鬼が村人から奪ったものをどうするのか(鬼は鶏を奪って、その後ひなが産まれている)、鬼が今後どこで暮らすか(鬼ヶ島は作物がとれない、現在村人が住んでいる島は狭くて鬼は住めない、などなどの事情有り。)という2点が大きな争点でした。


2 子どもたちの様子

まずは全体の話がわかるような寸劇、それから民事調停の説明、そして桃太郎と赤鬼が小倉子ども民事調停に申立を行い、調停をしているという寸劇という形で進めました。

寸劇の中から、双方のいい分からわかったことや対立点を理解してもらうよう、ワークシートに書き込んでもらい解決策をグループで議論してもらいました。最初こそ、子どもたちはとてもおとなしく、なかなか質問も出ませんでしたが、調停条項を考えるときにはするどい質問もたくさん出て子どもたちの発想の柔軟さを感じるとともに、一生懸命考えている姿を見ることができました。

グループ討論では、たとえば一つの案(今後桃太郎と鬼が一緒に住む)を出せば、桃太郎もしくは赤鬼にとってはあまりよくないもの(村人は鬼を怖がっている)なので、さらにそれをカバーするために別の条項(鬼は村人に手を出さないことを約束する、田んぼ仕事を一生懸命手伝って村人に鬼のことを理解してもらう)を考えるなど、悩み工夫している姿が見受けられました。


最後には各グループから発表をしてもらいました。私は採点する役でしたが、どれもよく考えられていて、とても迷いました。最終的には、一番いろいろな考慮要素をクリアできていると思える案を選びました。(鶏とひなを半数ずつわける、鬼は鬼ヶ島で住むが、村人が住んでいる場所から離れている場所で米作りを教えてもらうなど。)


3 感想・今後の課題

対立が生じている裏には双方の言い分があり、解決のためには、双方の言い分を良く聞いて解決案を示すことが大事だということがわかってもらえたかと思います。今回は模擬民事調停ということで、刑事裁判のように厳密なものの見方を教えられたわけではありませんが、今回の模擬民事調停が子どもたちの日常生活に役立つ視点となったのであれば嬉しいかぎりです。

もっとも、子どもたちからたくさんの意見を引き出し、議論を活発にするためにどのように進めていくべきかは今後の課題であり、工夫できるところだと思います。また1つの学校からまとめて参加していたことからすると、ジュニアロースクール自体の宣伝広報活動も考える必要がありそうです。

なお、アンケート結果からすると、おおむね楽しんでくれたようで少しホッとしました。個人的には、普段子どもと話す機会がない私にとっては、とても楽しい時間となりました。

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