福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2012年6月号 月報

精神保健当番弁護士活動報告

月報記事

会 員 中 野 敬 一(49期)

1 平成23年10月20日、甲病院に入院中の乙さんから精神保健相談の申込みがあったとの連絡を受けました。甲病院は遠方(1回行くと往復も含めて半日はかかります)にあり、担当丙医師もお忙しく、日程調整がつかず、1週間後の病院訪問となりました。

  乙さんは、当時52歳でしたが、24歳のときから精神疾患(病名は伏せます)を発症し、入退院を繰り返しており、今回は約1年半前からの入院(医療保護入院)で、ご本人は退院を希望していました。

  ご親族(兄)は退院には否定的であり、乙さんは退院すれば一人で生活しなければならない状況でした。

  第1回面談では、乙さんは、病識はありましたが、服薬については、その必要を感じないので薬は飲まないという態度でした。丙医師も、このような態度を問題にし、入院患者とのトラブル等もあるということで、医療保護入院の必要性はいまだ存在するとの見解でした。

  そこで、退院には服薬の継続が必要である旨、乙さんと話し合ったところ、乙さんも「症状は完全回復までには至っていないかもしれない。薬を飲みながら、12月頃にもう一度相談したい。」と話すようになりました。


2 約束どおり、平成23年12月7日に乙さんと2回目の面談をしました。

  丙医師の話では、第1回面談以降、乙さんは真面目に服薬を継続しており、精神状態も安定してきたので、半年程度このまま推移すれば任意入院への切替も可能ではないかとの話でした。この旨、乙さん本人にも話し、次のステップとして、金銭管理を自分でやってみることを助言しました。


3 年が明けると乙さんから、やはり早く退院したいので、退院請求の申立てをしてほしいとの連絡があり、平成24年1月13日、3回目の面談に行きました。丙医師からは服薬も継続しており、トラブルを起こすこともなく、平穏な入院生活を送っているとの話を聞き、金銭管理にはまだ改善すべき点がありましたが、退院できる状況は、ほぼ整ったのではないかと考え、同月20日県に対し退院請求を申し立てました。


4 平成24年2月28日退院等の請求の結果通知があり、「3ケ月を目処に、他の入院形態(任意入院)への移行が適当であると認められます。」という内容でした。乙さんも、近いところに確実な目標ができ、毎日に張りができた様子でした。


5 活動全体を通じて、やはり相談者と面談を重ねて、退院に向けて階段を登っていくことが大切だと思いました。

  また、今回、比較的早期の任意入院への切替が認められたのも、私の前に精神保健相談を担当された弁護士の支援で、乙さんが生活保護を受給できており、任意入院になっても最低の経済的基盤があったことが重要であったと思います。

  その意味では、弁護士のリレーによる活動でした。

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