福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2012年2月 1日

◆憲法リレーエッセイ◆原発なくそう!九州玄海訴訟のご紹介

憲法リレーエッセイ

会 員 前 田  牧(61期)

1 「原発なくそう!九州玄海訴訟」のご紹介
平成24年1月31日、1000名を超える原告と九州各県の弁護士からなる弁護団は、人格権に基づく妨害排除請求として、九州電力玄海原子力発電所の運転差し止めを求めて佐賀地方裁判所へ提訴する予定です。(この月報を読まれる時点では提訴されているでしょう。)

2 「原発なくそう!九州玄海訴訟」の特色
従来の原発訴訟の形態は、国に対して設置許可処分の取消・無効確認を求める行政訴訟または電力会社に差し止めを求める民事訴訟でした。これに対し、九州玄海訴訟では、国と電力会社を相手に民事訴訟での差し止めを求めます。訴訟は、原発の危険性について十分な検討を行わないままに、原発安全神話を浸透させ、原発立地を推進してきた国の責任を厳しく問うものになります。

3 これまでの原発訴訟との決別
これまでの原発訴訟は、志賀原発2号炉建設運転差止訴訟(民事)一審、もんじゅ設置許可無効確認訴訟控訴審を除いて、そのすべてが原告敗訴で終わっています。
脱原発全国連絡会で講演した河合弘之弁護士(浜岡原発差止訴訟弁護団長)によれば、原告敗訴の原因は、訴訟技術面では立証責任の課題をクリアできないこと、さらに大きな課題として世論の後押しが弱かったこと(一部の人たちが起こした裁判だと捉えられていたこと)と語りました。また河合弁護士は、特に、立証責任について、伊方原発訴訟最高裁判決の判断枠組みによれば一見原告側の立証責任が緩和されているように思えるものの、実は国側の立証は容易である反面、原告側は危険性の存在について厳しい立証責任を課されることとなり、「具体的危険性を立証していない」と判断されてきたと訴えました。
この点については、昨年起こった福島原子力発電所の事故やその後明らかになってきた事柄が、裁判所の判断枠組みに影響を与えるか、注目すべきところだと思います。

4 1万人原告を目指して
ところで、「原発なくそう!九州玄海訴訟」では既に原告が1000名を超えていますが、更に1万名を目指しているところです。
原告申し込みの受付をしていると、「Twitterを見た」「Facebookを見た」と言って問い合わせをいただくことが多くあります。多くの人々に訴訟の存在を知らせるツールとしてSNSを使いこなすことも重要なのだと感じています。
それと同時に、訴訟の意義や内容を知っていただくためには、このようなSNSだけでは十分な情報を伝えられません。勉強会や集会を弁護団・原告団自身が行ったり、あらゆる集会に飛び入りで参加して訴訟を紹介させていただいたりしているところです。
会員の皆様で、原発問題に関する勉強会等を開催される予定があれば、弁護団に声をかけていただければ幸いです。また、代理人として参加していただける方も大募集しておりますので、興味がおありの方は是非ご参加ください。
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