福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2012年1月号 月報

インターネット被害対策110番

月報記事

ホームページ委員会 松 尾 重 信(51期)

平成23年12月2日午後1時から午後5時まで、インターネット被害110番を実施しましたので報告します。

ホームページ委員会では、インターネットがらみでのトラブルが多発しているにもかかわらず、インターネットが絡んでいるとなると及び腰になり、法的救済を受けられずにいるケースが多いという認識から、平成17年度よりインターネット被害対策110番と題して、無料電話相談を実施しております。過去の相談においては、ワンクリック詐欺、ワンクリックすらしていない架空請求詐欺、オークション詐欺、ネットによる名誉毀損、ホームページリース詐欺等、当時委員会として想定していた事件も多くありましたが、某通信会社の代理店詐欺、内職紹介トラブル(ないし詐欺)等相談を通じて手口を知るようなものもあり、被害対策弁護団を結成し、解決を得た事案もありました。ある意味ネットが介在すると被害が拡大する傾向にあり、今後消費者委員会等関連委員会と協力体制を作っていく必要もあると思われます。

本年の相談では、事件化に至った相談はなかったものの、ネット上での名誉毀損ないしプライバシー侵害や、パソコンを起動すると特定のサイト(出会い系やアダルトサイト等が多い)を自動的に表示するスパイウェアプログラムに関する相談、迷惑メールの対処法等の8件の相談がありました。もちろん、この中には、パソコンやインターネットの近時動向を知らなければ対応できないような相談もありましたが、相談内容としては、通常の法律相談と同様であるものもありました。

弁護士としてはネットやパソコンが絡むと、知識がないとして敬遠されがちな分野であります。ホームページ委員会では、今後会員へITがらみの事件に対する対処法や基礎知識を提供するための講演を企画していき、会員間で情報を共有していけるようにしていきたいと思います。
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ITコラム

月報記事

会 員 塗 木 麻 美(62期)

今年も後わずか、2011年は未曾有の大震災の年として記憶されるでしょうが、ことIT界においては、スマートフォン元年と位置づけられるかもしれません。
昨年も既にiPhoneは珍しい存在ではありませんでしたが、今年は電車やバスの中で、人々がやや大きめのケータイに向かう様も普通の光景となりました。
ヒトにとっての外部記憶となる機器が、一部の好き者の「ガジェット」としてでなく、完全に市民権を得た感があります。
元祖ガジェット好き(現在は予算難らしく隠遁中)の私の夫に言わせると、「隔世の感、夢の世界まであと少し」といったところのようです。
さて、そんな相方がこれまで蒐集?したモバイル系情報機器は、覚えている限りでも、DataScope(京セラのでかいPHS)、Libretto70、jornada720、WorkPad30J、CLIE、ZaurusSL-C3000、sigmarionIII、ノートPCではvaioPCG-U1、 thinkpadやLet_sNote、Eee PC(ネットブック)、そしてiPad2...(知っている人だけ懐かしんでください)。
さて、これらのうち、いわゆるPalm系の機器は、ご記憶の方も多いかともいます。
Palmは、携帯情報端末(PDA。死語??)の一つです。99年、IBMから日本語版Workpadが出荷され、2000年にはSonyが独自にカスタマイズしたClieを出すなど、一世を風靡しました。形や特徴は概ね現在のスマホに近く、今でも現役で見かけますね。
PalmがそれまでのPDAと違って成功しかけた要因は、「Zen(禅) of Palm」という哲学で、機能をシンプルに絞ったことにあります。白黒画面にスケジュール、メモ帳等といった基本的なアプリケーションで、当時の貧弱な機器スペックでも軽快に動作するものでした(単にアプリ製作の技術力がなかっただけかもしれませんが)。
しかし、ご存じのとおり、Palmは一部好き者のための「おもちゃ」にとどまり、携帯電話の高機能化に伴い、日本からはほとんど姿を消しました。
ところが今年、PDAは一気に「スマホ」という形で復活し、反対にこれまでのケータイを駆逐しかけています。この違いは何でしょうか?
私は(というか相方が言うには)、人が携帯情報端末に求める機能(キラーアプリ)にあったのかと思います。実は人々は情報端末にスケジュールやメモ帳の機能は求めていません。紙の手帳で充分です。それよりも、ネット等への「つながり感」を容易に確保してくれるアプリやサービスを求めていたのではないでしょうか。
情報検索、SNS、Twitter、地図サービス...。情報端末は、単なる召使いではなく、社会への入り口となるスーパー秘書であることが求められているようです。今後は毒舌執事、能面家政婦など進化を遂げていくのでしょうか。
なお、つながり非重視の相方には、キラーアプリは議事録メモのようで、いまだにsigmarionIIIを現役で使っています。
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◆憲法リレーエッセイ◆ 東北の公設事務所に赴任して

憲法リレーエッセイ

会 員 中 野 俊 徳(56期)

永尾廣久先生から、「東北と福岡の違いを軽いタッチの読み物として書き、最後に憲法と絡めるように」との執筆のご指示をいただきました。文才の無い私にとっては、いわゆるムチャブリというものですが、大恩ある永尾先生のご指示には逆らえません。

私は、この8月に福岡に戻ってくるまで、福岡市で半年、田川市で5年、秋田県能代市で2年4か月の弁護士活動をしてきましたが、取り扱った事件の中身自体は、債務整理、離婚、遺産分割、交通事故、債務不履行等々、どこでも大差はありません。
しかし、東北の冬には雪があります。能代は風が強いことで有名でして、地元の弁護士が訴訟の関係で調査したところ、能代の風は九州の台風よりも強いことがわかったそうです。この強風のため、能代では冬部でも雪がひざ上以上に積もることはまず無いのですが、短時間で凍ります。お昼には快晴で雪が全く無かったのに、午後に数件の法律相談をこなした後、接見のために事務所を出ると、雪が降っていて、事務所の前の直線道路がずっと先まで凍結してキラキラ光っている風景を見るという経験を何度もしました。雪上の運転にはいつまでも慣れず、車のブレーキを踏んでも止まらず、赤信号の交差点に進入してしまったり、前の車に数センチのところまで接近してしまい、それまでの人生を走馬燈のように思い出したことが何度かありました。
風がそこまで強くない内陸部では、重機で除雪した翌日に数メートルの雪がまた降るような状態で、被後見人所有の建物が雪の重みで潰れないように雪降ろしを手配するというのが、成年後見人の重要な仕事の1つになります。
このような厳しい冬期を毎年過ごしているからか、能代での依頼者の方々はどちらかと言えば寡黙で忍耐強く、債務整理の事案でも「借りた金は返さなければならない」とぎりぎりまで頑張る方が多いように感じました。それはそれで1つの美徳ではありますが、過度に頑張りすぎて、ヤミ金に手を出したり、家族や親戚の財産が全て無くなるまで返済を続けたりする方もいました。
一方で、田川での依頼者は、能代と比べたら、良くも悪くもラテン系のノリを持っている方が多く、冗談半分ですが「返せない人間に貸すほうが悪い」と言われる方もいて、こちらも苦笑せざるを得ませんでした。
もちろん、これらは程度問題であり、能代にもラテン系のノリの方もいましたし、田川にも大変生真面目な方はいましたが、東北の冬期(12月~翌3月)を過ごしていますと、私自身、福岡の明るい日差しが恋しく、何とも暗い気持ちになり、気候が人の気質に与える影響を、我が身をもって実感しました。

東北と福岡の違いは語り尽くせないのですが、どこであっても変わらないのが、法律であり、法制度であるはずです。私は、司法試験に合格した直後から、弁護士過疎問題に関心を持つようになり、弁護士登録して最初の6か月はやむなく福岡市で弁護士活動をしましたが、その後はずっと支部で活動してきました。日本国内どこであっても適用される法律や法制度は変わらないと言っても、多くの弁護士がいる本庁所在地と弁護士が比較的少ない支部管轄地とで住民が享受できる司法サービスの内容が事実上異なるのであれば、法律や法制度は絵に描いた餅に過ぎないと素朴に感じているからです。
それは憲法論も同じことで、どれだけ立派な条文を整え、どれだけ立派な理念を唱えようとも、弁護士過疎のために憲法の理念が現実化していない地域があるのであれば無意味だと思って、今日も支部で仕事をしています。

さて、永尾先生のご指示にどれだけ沿えたのでしょうか......。
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シンポジウム 司法改革の光と闇 法曹人口大増員政策の行方

月報記事

法曹人口問題シンポジウム準備会 委員 三 山 直 之(62期)

平成23年11月26日(土)午後2時から午後5時30分にかけて、福岡商工会議所において、標記シンポジウムが開催されましたので、その準備会の様子も含め、ご報告いたします。

0 準備会・勉強会
平成13年の司法改革審議会最終意見書から10年を経た本年、3月27日付け日弁連緊急提言が出される等、司法改革の見直し、更なる改善の動きが見られるようになり、全国で法曹人口問題に関するシンポジウムが開催されました。
福岡県弁護士会においても、標記シンポジウムの開催に向けて、本年6月に準備会が設置されました。
また、本年8月以降、外部の方も招き、広く会員向けに告知をした上で、勉強会が開催されてきました。

1 当日-基調報告
当日、小林洋二先生の司会のもと、滞りなくプログラムが進められました。
まず、当会会長吉村敏幸先生から開会の挨拶を頂いた後、石渡一史先生から、基調報告として、法曹人口問題に関するこれまでの経緯報告と論点の提示を頂きました。
設定された論点は、以下のとおりでした。
・ 諸外国との数的比較
・ 弁護士過疎の問題
・ アクセスルートの問題等
・ 職務拡大の問題等
・ 法化社会とは
・ 法化社会と法曹像
・ 法化社会と法曹人口
・ 弁護士像について
・ 法曹人口問題と法曹(弁護士)の質との関連について
・ 法曹の質の問題と資格試験・OJT

2 当日-ディベート
次に、上記の各論点について、森裕美子先生、柴田耕太郎先生、伊藤巧示先生が増員賛成派、松尾重信先生、向原栄大朗先生、桑原義浩先生が増員反対派の立場から、それぞれ意見を戦わせました。
もちろん、ディベートですから、先生方個人としての意見ではありません。
しかし、いずれの先生方も、両者の意見をよく勉強された上で、それぞれの立場から、主張・反論をなさっており、準備会・勉強会の成果を遺憾なく発揮されておられました。

3 当日-パネルディスカッション
その後、前田憲徳先生がコーディネーターを務め、全国消費生活相談員協会九州支部長の井出龍子様、西日本新聞社編集局長の井上裕之様、福岡市医師会理事の原祐一様、エムクラフト・代表取締役の松波徳明様、石渡一史先生によるパネルディスカッションが行われました。
井手様からは、このような問題があること自体あまり一般市民に知られていないのではないかとの問題提起がありました。
松波様からは、「弁護士に頼むというのは、一生に一度あるかないかの経験。質の確保の問題は重要。」との指摘がありました。
原先生からは、教育・質の確保という観点から、医師の世界においてはこれほどの急激な増員というのはあり得ないとの発言がありました。
また、井上様からは、子どもが「弁護士になりたい。」と言える社会でなければならないとの意見を頂きました。
この他、いずれの方々も、多岐にわたる論点について、それぞれの立場から様々な意見を述べられました。それら意見の中には、弁護士同士での議論では必ずしも明らかにならなかったり、重要視されないものであったりするものもあり、極めて貴重なご意見・ご発言を頂けたものと思われます。
また、会場からも、試験制度の問題点に踏み込んだ発言がなされる等、活発な意見交換が行われました。

4 当日-まとめ
最後に、準備会委員長の市丸信敏先生、日弁連副会長の中村利雄先生からまとめの言葉を頂戴し、当会副会長の_橋直人先生から閉会挨拶が述べられました。
当初3時間の予定でありましたが、議論白熱のため30分ほど超過し、盛況のうちに閉会となりました。
中村先生が、ご発言の中でPDCA(Plan→Do→Check→Act)サイクルについて触れられ、検証の必要性を訴えられていたのが印象に残りました。

5 今後について
準備会については、標記シンポジウムの盛況により、ひとまずその役割を終えたということになるかと思います。
しかし、もちろん標記シンポジウムのみをもって法曹人口問題に解決の目途がついたというものではありません。
私が強く感じたことは、この問題は、「あるべき司法とは何か。」を考えるものであるということであり、したがって、・継続的に検証と改善を重ねていかなければならず、・身内の議論に終始せず、広く市民・国民の声を聞かなければならないという点です。
本拙稿が、会員皆様方がこの問題について再考察をするためのきっかけとなれば幸いです。
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