福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2011年12月号 月報

拡がれ!『法教育』の輪! ~懸賞論文で優秀賞を受賞しました!~

月報記事

法教育委員会 委員 春田 久美子(48期)

1 懸賞論文に応募した経緯
私は、法務省が昨年初めて実施した「法教育懸賞論文」に応募し、平成23年1月、思いがけず、優秀賞を受賞しました。
テーマは「学校現場において法教育を普及させるための方策について」。この懸賞論文の存在を知ったのは、応募締め切りが約2週間前に迫ったころでした。偶然見かけた法テラスの広報誌(ほうてらす)の裏表紙にあった「締め切り迫る!!」「学校現場において法教育を普及させるための...」との文字が目に飛び込んできたのです。当時、手詰まり感を感じていて、ずっと何か法教育を拡げていくためのアイディアはないかな~と考えていたので、私は、これまでにやってきた活動を振り返りつつ、とりあえず自分が思っていることをまとめる良い機会だと思い、応募してみることにしました。

2 法教育と私
私が小学生を含む学生さんの相手をするようになったのは福岡地裁小倉支部に左陪席として働いていたときのことです。福岡地裁本庁を始め、裁判所全体が(一般の市民向けの)"広報"というものを意識し始めた頃だったと思います。初めのうちは、一体何をやったらいいんだろう、という感じでしたが、本庁にいらっしゃった広報上手な職員の方にアイディアを色々教えていただいたり(模擬裁判の体験と子供たちとの質疑応答・お話など)、他の庁の子供たち向けの取り組みの工夫例を色々調べたりするうちにドンドン楽しくなっていきました。一番忘れられないのは、小学校3年生くらいの子供たち10数人を担当したときのことです。引率をされた女性の先生が(感動しました!ということで)、後日、子供さんたちの可愛い感想文を郵便で届けて下さったのです。簡単な模擬裁判をやってみたのですが、『検察官と弁護人の言い分を聞いていると、どちらもそう思えるところがあるから、どうしていいかますます分からなくなりました...』という感想が忘れられません。また、時間内には出来なかった質問等も書かれていたので、嬉しかった私は御礼も兼ねて返事の手紙を出しました。今でもそのときの感想文は私の宝物です。もう一つ、私が法教育というものを続けていこう、と思ったエピソードがあります。毎年5月位に、最高裁判所の裁判官が全国各地の裁判所を訪問する、という企画があるのですが、山口繁裁判官がお見えになった際、昼食会の席上で予定の話題が意外と早く終わってしまったため、支部長が突然、私に話を振り「子供さん向けの相手をしている判事補です」と私に何か話をするよう向けられたのです。私はドキドキしながら活動の様子を報告したのですが、その後、山口裁判官が各裁判官室を回って来られた際、「さっきの方ね。これからは、若い人向けの裁判の世界の紹介、是非お願いしますね。」とお言葉をかけていただいたのです。あ~やっぱり大切なんだ、この活動は!と素直に嬉しく思えました。

3 論文に書いたこと
論文には、法教育にはどのような意義があるのか、どういう魅力が詰まっているのか、その有意義さと楽しさを踏まえ、それなのに学校現場(教師の方々)になかなか拡がっていかない理由は何なのか、などを私なりに考え、それを解消するためにやった方がいいと思うことを先ず書きました。そして、やはり、具体的に、じゃあ、どんな風に意味があるの?という疑問に応えるべく、授業例の紹介や、授業で取り扱う際の切り口の数々を思いつく限り書いてみました。自分の中で、クライマックスの部分は、NIE(教育現場に新聞を)とのコラボレーションの部分です。法教育の意義は、その捉え方によって様々あるようですが、詰まるところは、民主主義を支える将来の子供たちを育む、という点でNIEが目指すところと一致すると思えたのと、コラボ出来れば、メディアを介して法教育自体も拡がっていく可能性に魅力を感じたのです。

4 応募と発表、そしてその後
締め切り直前の日、もうキリがないよね、と事務員さんとも話して、論文を取り上げられ(!)、中央郵便局に速達で出しに行ってもらいました。発表は12月下旬となっており、御用納めの日までに何も連絡がなかったので、ダメだったのかな~と思っていたら、年明け、少年鑑別所での面会を終えて帰ってくる途中、携帯に電話がありました。最優秀賞(1名)と優秀賞(2名)の受賞者は、法務省にて授賞式が行われることになっていました(平成23年3月15日)が、東日本大震災の発生直後だったため急遽取りやめになりました。ですが、この受賞をきっかけに、色々なところから法教育について何かを書かせていただいたり、メディア(特に新聞)からの取材を受ける機会が増え、学校現場の先生方や教育委員会等に法教育についての広報に伺う際、一つの話題とすることが出来るようになったことは嬉しいことでした。

5 法務省でお話してきました
平成23年11月4日(金)、法務省の「法教育推進協議会」というところに招かれ、法教育の取組みについてお話をさせていただく機会を得ました。論文を書いてからちょうど1年が経っていましたので、当会の法教育の車の両輪としての"法教育センター"と"法教育研究会"の活動内容を含め、今、直面している課題等についてもお話してきました。
法教育、と一口に言っても、法務省・裁判所、そして司法書士等の隣接業のそれぞれが法教育に取り組んでおり、学校現場の先生方にとっては選択肢があり過ぎるように受けとめられ、何と言っても"何だか難しそう..."と思われているのが現状です。私自身は、今、日本全体で問題になっている、子供たちの言語能力の向上や対話力、コミュニケーション能力のスキルアップの観点からも、この法教育は有用なのではないか、と信じており、さらには、立場が異なり利害がシビアに対立する場面で普段仕事をしている私たち弁護士だからこそ伝えられる何かがあると思っています。その魅力を、法教育研究会に集まってきて下さる学校現場の教員の方々等と一緒に知恵を出し合い、良い教材を開発しながら、今後も地道に伝え続けていこうと思っています。

6 結びにかえて‐会員各位へのお願い
お子様を学校に通わせていらっしゃる世代の会員の皆さま、子育てはもう終わったけれど、教員に知り合いがいらっしゃるという皆さま、私たち法律家が日ごろから思っている知恵などを子供たちにも伝えたいという理念に共感して下さる方、PTA役員である方はもちろん、顧問先として学校現場の先生方にお知り合いがいらっしゃる皆さま、どうか、当会の法教育センターの、弁護士の出張授業のことをお知り合いの学校の先生、あるいは保護者の方に「これやってみませんか?」とご紹介いただけませんでしょうか!それを期待しまして、間もなく皆さまのお手元にレターケースを通じて法教育センターのチラシを一枚ずつお届けする準備をしています。今年度は80クラス無料キャンペーン実施中ですので、金銭面では学校の負担はありません(そこも売り込んで下さいね。)。世界一受けたい法教育の授業を開発するべく、私たち法教育委員会のメンバー皆頑張っています。福岡から「生きる力」を持った子供たちをたくさん育むため、法教育の輪が拡がっていくために、お知恵やお力を貸していただけましたら幸いです。あっ、そうそう!肝心の受賞論文は、法務省のホームページに載っていますので、ご一読いただけましたら幸いです。
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