福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2008年2月号 月報

当番弁護士日誌

月報記事

会員 柳 優香(60期)

1 【初めての当番弁護士出動】

「当番が入ったんだけど、明日行ってくれない?」。ボスの一声に「はい!」と答える(しかない)私。

こうして、期待と不安の入り交じった中、私の初めての当番弁護士活動が始まりました。

2 【接見〜受任】

被疑者XさんはA国へ密航をしようとしたA国人を案内役の男性とともに、車で港まで送迎し、不法出国を手伝ったとして、入管法違反幇助の容疑で逮捕されました。

Xさんによれば、友人に観光案内の運転手のアルバイトと聞いて行ったのであり、密航しようとしていたことは知らなかったとのこと。しかし、私が接見に行った時点では、警察官に「今思えば、密航かもしれないと思うだろう。」「観光旅行者にしては荷物が少ないと思っただろう。」等誘導され、既に「おかしいな、まさか密航するつもりかなと思いました。」「観光旅行者にしては荷物が少ないと思いました。」といった自白調書をとられていました。

私は、Xさんに、黙秘権、署名押印拒否権、調書訂正申立権があること等を説明して、今考えたことではなく当時思っていたことを言うこと、自分の言い分を貫くことを言い聞かせました。Xさんには十分な資力がなかったため扶助で受任することになりました。

3 【弁護活動】

私は、Xさんは留学生であることから、起訴されてしまうと学生の身分を失い、在留資格をも失う恐れがあったため、何としても不起訴にすることを目標に活動を始めました。

まず、否認事件であったこともあり、被疑者ノートを差し入れて取調べ状況等を記録させました。また、身柄拘束中は学校を無断欠席という状態でしたし、年明けには進級試験を控えていたため、早期に身柄解放しなければならないと思い、捜査状況等を見ながら勾留期間が延長された場合には準抗告をすることにしました。まず、準備として、Xさんのアルバイト先の雇用主に身元引受人になってもらい、友人に嘆願書を書いてもらいました。

また、念のためにXさんに運転手のアルバイトを紹介したという友人に話を聞いて、Xさんの言い分の裏をとっておきました。そうしているうちにあっという間に10日間が経過し、勾留期間が延長されたのですぐに準抗告をしました。Xさんには犯罪の嫌疑がないこと、勾留延長をしなければならない「やむを得ない事由」がないこと等をしつこく書いたのですが、棄却されてしまいました。残念な結果でしたが、アルバイト先の雇用主や友人の協力を得ることで、Xさんを勇気づけることができましたし、Xさんとの信頼関係を築く上でも一定の成果があったと思います。

4 【最終結果】

勾留満期の前日、担当検事から「明日の午前中に釈放します。」とのうれしい連絡がありました。最後に、Xさんが、学校や在留資格の関係で今後のことを不安に思っていたので、念のために「不起訴処分告知書」の交付請求をして、私の弁護活動は終わりました。初めて単独で刑事事件をして、最初に勾留状謄本を取り忘れたり、準抗告すべきなのか迷ったりと、失敗もたくさんしましたが、Xさんや関係者に御礼を言われたときには心からうれしく思いました。

今回の事件を通して、刑事事件は処分結果次第で、被疑者の将来を大きく左右すること、被疑者段階で弁護人が付くことが重要であることを実感し、その責任の重さを痛感しました。今後も、刑事弁護に関わってその責任を全うしていきたいと思います。

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