福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2005年10月号 月報

裁判員裁判用法廷の公開

月報記事

刑事弁護等委員会副委員長 安武 雄一郎

福岡地裁本庁の三〇一号法廷が、この度、裁判員裁判用の法廷として改装され、九月二日、法曹関係者に公開されました。改装のポイントは次のとおりです。

  1. 裁判官三名と裁判員六名が一列に並んで座れるように、法壇がアーチ型となっている(東京高裁に設置された裁判員法廷と同じモデルです)
  2. 法壇の高さが、他の法廷より一〇センチメートル低い
  3. 法壇の後ろに補充裁判員六名が座れるテーブルと椅子が置いてあるため、他の法廷に比べ、法壇がやや前にせり出している
  4. 当事者フロアが傍聴席フロアより五センチメートル高く、いわゆるOAフロアとなっている
  5. 傍聴席フロアが広がり、傍聴席の数が増えた

法壇が前にせり出し、逆に傍聴席が広がりましたので、当事者のフロアのスペースは以前より狭くなり、証人席と法壇の距離が近くなりました。そのため、法壇の高さが低い割には、意外に圧迫感を感じます。当日は、裁判所や検察庁の関係者も多数見学しており、裁判官・裁判員席に見学者に座ってもらって、証人席にも見学者に座ってもらい感想を聞きましたが、尋問中、どこを見ていればよいのか戸惑うとのことでした。実際に私も証人席に座ってみましたが、法壇との距離が近く、法壇が横長いので、単に前を向いているだけでは、裁判官・裁判員九名全員を一度に視野に入れることができず、両端に座っている裁判員の顔を見ようと思ったら、自分の顔を横に動かさなければなりません。また、法壇が横長いため、弁護人席に立って法壇の方向を見たところ、やはり両端に座っている裁判員の顔が見えにくい感じでした。今までみたいに弁護人席に立って、弁論要旨を見ながら弁論したところで説得力はなく、陪審裁判のように、弁護人が法廷の中央に立ち、書類を見ずに裁判官・裁判員全員の目を見据えて語りかけなければ説得的な弁論にはならない、とすら感じました。

裁判員裁判は平成二一年施行ですが、新三〇一号法廷は九月の夏期休廷明けから通常の事件で使用されるとのことであり、この記事が月報に掲載されるころには、新三〇一号法廷を経験される会員も増えることと思います。来るべき裁判員裁判を想像しながら、しばらくは裁判官のお顔だけを拝顔することになります。

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