福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2005年5月号 月報

当番弁護士日誌 〜動機は彼女との別れ〜

月報記事

後藤景子

夏の暑い日が続く中、当番弁護の出動依頼が入った。警察に留置されている被疑者本人からであった。罪名は住居侵入。被疑者はまだ若い男性であった。

いつもそうであるが、弁護士会からFAXされる当番弁護士申込書の記載のうち、被疑者に関する事項は住所氏名、年齢、職業性別のみであり、犯罪の内容に関するものといえば罪名、逮捕日時くらいである。したがって、申\込書を読んでから接見に行くまでの間、私の頭は想像でいっぱいになる。まだ若い男性が、夜中に住居に侵入しなければならなかった事情とはいったいどんな事情なのか・・・と。

接見室で面会して事情を聞くと、深夜、別れて間もない元交際女性のアパートの部屋に入ろうとして、建物二階にある彼女の部屋のベランダで窓ガラスをドンドンと叩いていたところ、駆けつけた警察官に逮捕されたということであった。

「ただ彼女と話をしたかった・・・」それが彼の動機だった。いくらよりを戻したいから会って話をしたいとはいえ、時間と方法を考えて行動しなければならないことは言うまでもない。彼のとった行動は間違っている。法に触れる犯罪である。しかし、一年間つきあった女性と別れてまだ二日しかたっていなかった。彼は、ゆっくり話しあう時間もなく一方的に振られたのであった。

恋愛のもつれが犯罪と関わっている場面は少なくない。別れ話、三角関係のもつれからおこる事件の態様は様々である。相手の命さえも奪ってしまうこともある。冷静な判断能力を失ってしまうからであると思う。責任能\力という難しい議論に踏み込むつもりはここではない。自分を見失うというのが正しい表現だろうか。愛情が深ければ深いほど、それを失った時には、もの凄い、自分ではコントロールできない感情に変化してしまう。犯罪に踏み込まないように自分をコントロールするという経験が、彼の人生においてそれまであっただろうか。今までにない自分を経験したことだろう。いろいろつらつら述べてしまったが、要は、被害者である元彼女と一刻も早く連絡をとり、彼の早期釈放を実現させようと思ったのである。

女性と連絡を取ると、彼女は「自分が悪い」という言葉を何度も発した。一方的に別れ話をした自分が悪いと自分を責めていること、事件の時には新しい交際相手と一緒におり、知らない間にその男性が通報していたこと、事件後駆けつけた警察官に対して彼を逮捕しないで欲しいと訴えたが半ば説得されるようにして彼が逮捕されてしまったこと、新しい交際相手を説得して警察署へ被害届の取下げと彼の釈放をお願いに行ったが検事に連絡を取るように言われたことなどの詳しい事情が分かったので、そのままを文章にして嘆願書を作成し、担当検事に提出した。

遠方の父親に身柄引受人になってもらうべく連絡をとったがすぐには駆けつけられないとのことであったため、彼が趣味を通じてお世話になっている知人の存在を担当検事に話した。しかし、担当検事が、身柄引受人は親族である父親の方が望ましいと判断したため、しばらくして父親に対し、検察庁の担当検事に会ってもらうように頼んだ。

そして、父親が担当検事に会った日の昼過ぎ、父親から彼の釈放の一報が入った。

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激震襲う! 被災者への無料相談会始まる

月報記事

藤尾順司

三月二〇日、のどかな休日のお昼、突然、震度六の大地震(福岡県西方沖地震)が福岡北西部を襲いました。この地震で事務所やご自宅が被害に遭われた会員の方には、心からお見舞い申し上げます。弁護士会館も三階の天井の一部に亀裂が入るなどの被害を受けました。

休み明けの三月二二日には、前年度執行部が地元の被災者のために無料電話相談会を実施され(前年度への気遣い)、その後、次のような相談会等を実施しましたので、併せて報告します。

急なお願いにもかかわらず、多くの会員に快く相談担当を引き受けていただきました。なかには、相談日は予定があるが、もし担当者が足りない場合は予\定を変更して引き受けてもいいと言っていただいた会員もおられたり、電話入れしながら嬉しくなるということがありました(実は、当番弁護士や国選弁護のお願いをする担当になりました。その節もどうぞよろしく!)。この紙面を借りまして、厚く御礼申し上げます。

電話相談
  1. 三月二四日から二六日の三日間
  2. 相談担当者のべ 三六名
  3. 相談件数合計 一四六件
面接相談(弁護士会館)
  1. 四月九日(土)午後一時から四時
  2. 相談担当者 一二名
  3. 相談件数  一九件
相談への派遣

福岡市から、被害が甚大であった地域に、行政、法律、福祉、住宅、健康について巡回相談を実施するので、相談担当者を派遣してほしいとの要請がありましたので、次の各地域に二名づつ派遣しました。五日間の相談件数は合計二〇件でした。

四月一日 東区 志賀島公民館
四月二日 西区 西浦岡集会所及び浦救難所
四月三日 西区 北崎公民館
四月四日 西区 今宿出張所
四月五日 西区 今宿出張所

法律相談センターでは、地震に関する相談については相談料を無料という取り扱いにしました。三月二四日から四月七日までの間に福岡市内及び近郊の五カ所の法律相談センターで受けた地震の相談件数の合計は四六件でした。

法律相談センターでは、地震に関する相談については相談料を無料という取り扱いにしました。三月二四日から四月七日までの間に福岡市内及び近郊の五カ所の法律相談センターで受けた地震の相談件数の合計は四六件でした。

紛争解決センターも地震に関する紛争については、申立手数料を免除することにしました。

これまでのところ、相談内容は、地震によって瓦が隣家に落ちて隣家の車を傷つけた、ブロック塀が倒壊して隣家に被害を与えた、マンションにおいて温水器や水道管からの水漏れにより下の部屋に被害を与えたなどによる被害の相談が三五%ほどを占めていました。その次に多いのは、借家の修繕や賃料、敷金に関する問題や、マンションやビルの補修の問題でした。

被災者の生活が落ち着きだすと、次第にマンションの修繕や保険金請求の問題など専門的知識が要求される相談が増えてくるのではないかと思います。

阪神淡路大震災後、たくさんの法律相談活動を経験された弁護士を招いて、地震の法律相談についての研修会を企画する予定です。

今後も状況を見て、弁護士会で相談会を実施することになると思いますので、ご協力をよろしくお願いします。

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ホームページ委員会だより

月報記事

中野俊徳

第一 私がHP委員会の委員である意味

昨年度末頃にホームページ委員会の委員になりまして一年が経過しました。

私は今年三月三一日の時点で七つの委員会等の委員にしていただいておりますが、誠に申し訳ないことに、このホームページ委員会を含め、ほとんどの委員会等で幽霊委員と化してしまっています。

しかし、多くの委員会ではMLを持っており、MLに入っていることで少なくとも情報・意見交換は可能な状態です。

そういったことから、私のように福岡市から遠い地の事務所に属する者が弁護士会の活動に継続的に参加するためには、弁護士会の活動のIT化は必要不可欠なことなのだろうと実感していますし、そういった観点から、福岡市以外の地に事務所を持つ弁護士にとっての弁護士会のホームページのあり方を考えろというのが、私がホームページ委員会の委員である意味であるのでしょう。

第二 私の弁護士会HP利用の内容

そこで、幽霊委員ですのであたかも非委員かのような第三者的な書き方になってしまいますが、私が日頃の弁護士業務において弁護士会のホームページをどのように利用しているかを考えてみます。

改めて思い返してみると、私は、日頃の業務時間の中で、弁護士会のホームページを見ることが案外多いように思います。

他の先生方の電話番号、ファックス番号を知りたいときは会員情報のページで確認しますし、刑事弁護で量刑について検討したいときは量刑資料検索も見ています。

また、筑豊以外の裁判所での訴訟等を受任したときは、裁判官・検察官配置表で裁判官・検察官の名前や期を確認したりもしています。

掲示板で刑事弁護の事案について悩みというか愚痴を書いたこともありました(その事案がその後思わぬ展開となってしまいましたが・・・・・・)。

今や、情報収集や他者とのコミュニケーションの多くの場面でインターネットを利用することが当然の時代になっていますが、その中で弁護士会のホームページが弁護士業務に果たす役割は大きいのだろうと思いますし、もっと専門的な情報提供(たとえば、兵庫県弁護士会のホームページでの消費者問題判例検索ページのような)ができたらいいなと感じてもいます。

第三 市民にとっての弁護士会HP

また、弁護士会のホームページはいわば弁護士会の顔ですから、幽霊委員とは言いつつ、市民の方が弁護士会のホームページをどのように利用しているかも気になるところです。

今、弁護士に法律相談に行く前に、インターネットで多くの知識を得てきている相談者の方は珍しくありません。

しかし、その一方で、弁護士を探している市民の方が、弁護士事務所にたどり着く過程で、弁護士会のホームページ等、インターネットを利用しているという実感がまだまだ私にはありません。

私のところに相談に来る方は、地元の司法書士や税理士、行政書士からの紹介など口コミが多いですし、時には、私が東京での生活が長かったこともあり、当事者が共に東京在住という事件の受任依頼をいただくこともあります。

こういったことは多くの先生方が経験されていると思いますが、こういったことがある度に、市民にとっての弁護士への距離を感じてしまうのです。

個々の弁護士に関する情報は個々の弁護士のホームページで提供するべきだとも思いますが、まだまだ越えがたい壁になっている、市民と弁護士との間の壁を取り払ううえでの一定の役割を弁護士会のホームページが担っているものと認識しています。

その意味で当委員会がなすべきことはまだまだたくさんあるのだろうと思います(と幽霊委員が勝手なことを言っております)。

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