福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2003年10月号 月報

ヤミ金対策法成立す!!  

月報記事

石田光史

第1節 先の国会において、いわゆる「ヤミ金対策法」が成立しました。この主要部分は、既に九月一日から施行されています。みなさん新聞報道等でご存じかとは思いますが、紹介と解説をさせていただきたいと思います。

第2節 ヤミ金対策法の内実は、貸金業法と出資法の改正です。内容は多岐にわたっていますが、主なところを挙げると、貸金業登録の拒否事由の追加、無登録業者の広告等の禁止、貸金業者に使用人等への従業員証明書の携帯義務を負わせたこと、出資法に定める金利違反の罰則強化などです。

第3節 しかし何と言っても本法の眼目は、契約無効規定を置いたことでしょう。貸金業法四二条の二は、次のように定めます。

貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約において、年一〇九・五%を超える割合による利息の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は無効とする。

ここで言う「貸金業を営む者」とは、登録業者に限りません。したがって、我々が日常相手をするいわゆる「ヤミ金」の契約は、利息部分だけでなく消費貸借契約全体が無効となります。

第4節 ところで、債務者がまだ元本分の返済も終えていない場合、どう処理すべきことになるのでしょうか。

この点、一部では、「元本分を返済すれば利息分は無効となる」といった報道がなされ、また某庁のホームページにはわざわざ「元本の返済義務はある」と記載されていました。会員の中にも、この点で混乱された方もおられるのではないでしょうか。

しかしこの報道・解説は明らかに誤りです。正解は、「この法律は、元本分の返済については何も言っていない」です。返せとも返さなくてもいいとも言っていない。つまり、元本分については、通常の不当利得法理によって処理されることになります。不法原因給付の適用も排除されません。衆議院法制局職員による解説も同旨です(金融法務事情一六八三号三七,三八頁)。したがって、ヤミ金による数百・数千%にも及ぶ超高利の貸付は、不法の原因によって給付されたものであり返還義務はない、としてきた従来の我々の主張に、何ら変更の必要はありません。

第5節 立法過程で、元本の返済不要も明記すべきとの意見もありましたが、今回は見送られました。この点を曲解して、立法により元本分は返済しなければならなくなったとする向きもあるようです。

しかし前述のとおりそれは誤りですし、実質的に考えても、ヤミ金「対策」立法が成立したことにより、従来我々が貫いてきた「ヤミ金に対しては一切返済しない」との原則が否定されるというのはおかしな話です。少なくとも、数百・数千%の超高利を取っている「ヤミ金」の貸付については不法原因給付に該当するとして、従来どおり一切返還しないという立場を貫くべきですし、それは全く可能であると考えます。

第6節 今回のヤミ金対策法には、物足りないとの批判もあります。その批判も解るのですが、ただ「『返済しない』という理屈は立つのか。立つとしても実際にはヤミ金とどう闘うのか。」などという議論をしていた当時(ほんの二年程度前です)からすれば、隔世の感があります。

近頃ヤミ金はだいぶおとなしくなり、数も減ったという印象があります。あと一歩です。このヤミ金対策法を活用して、ヤミ金を撲滅しましょう!

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