福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2003年9月号 月報

最適IT度

月報記事

中野

ITコラムの原稿依頼を受け,ITに詳しくもない私としては困りましたが,「ITに関する雑感でも何でも良いから」と言われ,引き受けることにしました。

このコラムでITの新活用法や裏ワザが分かるのではないかと思って読まれる方は,参考になりません。以下は全くの雑感です。

私の事務所にも数台のパソコンはあり,簡単なワープロ,表\計算,インターネット,Eメール程度はできますが,それ以上に精通はしていません。携帯電話も一応持っていますが,電話の受発信だけでメールのやりとりなどはしていません。私はITにも各人ごとに「これくらいが丁度良い」というIT度(最適IT度)があるように思うのです。

先日,北九州部会で新弁護士会館が完成したので,記念誌を作ろうということになり,記事にするため,弁護士会館のこれまでの歴史を大先輩の先生方にお聴きする機会がありました。そのとき,昭和30年頃の書面作成などの興味深い話をうかがうことができました。その当時はパソコンは勿論,複写機もありませんでしたので,写しを作成するときなどは複写紙を間に入れて手書きで作成していたとのことでした。複写機,パソ\コン,プリンターなどがなかった時代を経験された先生から見ると,ボタン一つで写しができ,簡単に修正できる文書が即座に印刷されて出てくるなどというのは全く夢の話で,その意味では革命的に便利になったが,他方,何でもコピーしたり,書面を書くにも後から修正すれば良いとして筋立てもそこそこにパソコンで打ち始め,印刷して活字になると何か出来上がったような気になって,そのまま提出してみたりというように仕事に対する「集中度」が希薄になったような気がするという趣旨の話も出ました。

私は弁護士登録前に企業に就職していたのですが,いわゆるワープロ専用機が出始めの頃で,新人の頃は上司からワープロ専用機(それも各部で2台くらいしかないので予約制でした)での書面作成を頼まれたものですが,ほとんどが手書きメモを清書するというパターンでした。パソ\コンやワープロ専用機がひとり一台時代になって,資料や文書をパソコン画面で推敲しながら考えるという執務形態に変わっていきました。パソ\コン等が出まわり,これで文書作成が楽になると思ったら,文書作成や修正が容易なので,かえって上司に何回も修正を命じられたり,上司も膨大なワープロ作成資料を見せられたりして,何がポイントなのかが分からないまま,資料・情報に埋もれてしまうことが多くなったような気がします。電子メールも便利ですが,他方,朝メールを開くとたくさんのメールが入っており,その内容をみるだけで時間がたち(しかも不必要な情報が多い),添付ファイルで取捨選択もないまま膨大な付属書類が流されてくることも多く,辟易することもあります。親指をつかっての携帯電話でのメールの頻繁なやりとりや電子メールでのチャットなどは個人的にはどうも違和感を覚えます。

このようにIT機器には功罪両面あり,また好悪もあり,やはり,各人の人生経験,仕事作法,性格などから,最適IT度には個人差があるように思います。だから,ITを駆使している方を見ても焦る必要はないと思います。ただ,「IT機器を扱ってみたが自分としてはここまでにしておく」という姿勢が大事で,初めからIT機器に近寄りもしないというのでは,最適IT度も分かりません。

「IT機器はどうも」という先生方もおられるかもしれませんが,まずトライしてみて(さしあたり弁護士会のホームページを見ることができるくらいまでは),その上で自分なりの最適IT度に落ち着くというのが良いのではないでしょうか。

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ADRの研修に参加して

月報記事

松原妙子

1 ADRとは何ぞやと思われている方のために。

簡単に言うと、紛争を早期に解決するために裁判所以外で解決しようという制 度で、民間紛争解決センターのことです。

研修は、本当にびっちりと12日は午後一杯、13日も午前9時から午後1時 まで。議論の内容は、主に、今後制定されるADR法がどう規定されるべきかに ついてであり、参加者は、皆各地でADR設立、運営について活動されている方 ばかりでした。

主な問題点は、ADRに申し立てたことについて、時効中断の効果を認めるか、 成立した和解に執行力を付与するかでした。

私は、時効中断の効果を認めなければ利用価値がないと思います。

そして、そのためには、ADR制度そのものが、信頼されるものである必要が あると思います。

その後、各地からの活動報告があり、石橋先生が立派に発表されました。

福岡は、医師、建築家等各種の専門家との連携を取れる体制になっているとの 発表で、福岡が1番整備されていると各地の先生が羨ましがっておられました。

福岡は、様々な制度で先駆者の役割を果たし、且つ、その制度を円滑に活用し ていることは誇りに思って良いことだと思います。

ところで、私が今回の研修に参加して1番感動したことは、結構お年の先生方 が参加しておられ、熱心に疲れを知らずに議論されていることでした。

ADRの設立準備の時から関与され、これまで熱心に活動され、さらにこれか らの制度、体制等を良くしようと考えておられる情熱は素晴らしく、法律家は何 時までも精神を若々しくしていなければいけないと刺激を受けました。

毎日、仕事に追われる生活ではありますが、そのような生活の中でも、余力を 残し、人のため、社会のために貢献せねばと思わせられた研修でした。

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