福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2003年2月号 月報

「あとは弁護士だけなんです!」 子どもの虐待問題についての取り組み

月報記事

松浦恭子

子どもの虐待問題については、子どもの権利委員会において、平成7年度に研修会が開催され、平成8年度から虐待問題小委員会が設置されて取り組まれるようになりました。平成12年度には、九弁連大会シンポジウムでテーマとして取り上げられ、多くの会員が参加されました。

そして、福岡部会の稲村鈴代会員が中心になって、民間団体として多くの専門職と一緒にふくおかこどもの虐待防止センター(略称F・CAP−C)が発足するに伴い、子どもの権利委員会メンバーを中心に、平成12年12月に、同センター弁護団が発足しました。現在当会から47名が参加し、児童相談所など関係機関からの相談や、虐待が問題となったケースの家庭裁判所の申立事件への代理人活動などに取り組んでいます。このほか福岡県、福岡市、北九州市の児童福祉審議会や福岡県児童虐待防止地域連絡会議(県内14ブロック)等に多くの会員が参加され、関係機関との連携が進んでいます。

平成12年11月には、児童虐待の防止等に関する法律が施行され、平成13年には、福岡家庭裁判所においても各支部で、関係機関連絡協議会が開催され、当会から参加しています。

こうした、いわば全体としての骨格となる取り組みが進むに連れ、様々な関係者と協議する機会が増え、実質的な連携が始まるようになりました。冒頭の言葉は、私がある児童養護施設の施設長さんから、開口一番いわれたものです。当初は、お互いにおっかなびっくりだった児童相談所との連携も、信頼関係が築けるに従い、中身の濃いものになりました。

これまで関わった事例では、当初は、乳児に対する身体的虐待や、重度のネグレクト(養育の懈怠、放棄)など比較的判断しやすいケースについて児童相談所が子どもを保護するにあたって、ケース会議で積極論を述べたり、現場に立ち会ったりと、どちらかといえば「励まし役」や「現場の用心棒?」的な役割を果たすことが多くありました。私も、頭部外傷で緊急入院した生後3ヶ月の男の子を病院から保護するなど、いわば典型的なケースに立ち会う経験をしました。また、家庭裁判所への申し立てにあたって、証拠のアドバイスをしたり、比較的簡単な法律相談を受けたり、ということが多かったのです。

しかし、最近は「親権」について、どのように考えていくのか、裁判所(司法)は、家族にどのように関わっていくのかを考えさせられる問題が多く、現代の問題の解決にふさわしいような条文や先例があまりない分野で、どうすれば子どもの保護を円滑に行なうことができるか、頭を悩ませることが多くなっています。例えば、民法766条は、離婚に際しての子どもの監護者の指定について定めていますが、これについて、親権者ではない第三者からの申し立ては許されるか、また第三者を監護者として指定することは認められるか、という問題が出てきています。先日開催された日本子どもの虐待防止研究会第8回大会では、初めて最高裁家庭局から講演が行なわれましたし、民法766条の問題などを協議した分科会には、東京家裁や横浜家裁から現職の裁判官も参加し、児童相談所関係者に交じって、意見を述べるようになりました。

問題となる虐待の種別も、性的虐待や心理的虐待など、司法の場での主張、立証が困難だったり、方針の建てにくい、難しいケースの相談が多くなりました。

まさにこれから、という分野ですが、弁護士としては、関係機関の一員としての動きということから、通常業務とは異なる手間もかかる、どちらかというと地味な仕事になるのかもしれません。

それでも、ケース担当可能な会員をFAXで募るのに対して、次々と担当可能という返事が返ってくるとき、こうした分野で骨身を惜しまず足を運ぶ仲間が多くいることを実感する、事務局として嬉しい一瞬です。

2004年には、福岡で日本子どもの虐待防止研究会第10回大会が開催される予定で、準備も進んでいます。弁護団では、1ヵ月に1度の事例検討会(勉強会)を軸に活動を続けていますので、興味のある方、ぜひ弁護団に御参加ください。

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