福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2002年5月号 月報

クリーンパーク臨海、和白干潟視察報告

月報記事

武藤糾明

たいへんまじめかつ熱心な委員会として広く知られている公害環境委員会は、2001年度の活動の締めくくりとして、3月22日に、貝塚のクリーンパーク臨海と、和白干潟の視察を行いました(参加者は、堀、藤井、高橋(謙)、日野、吉野、長戸、黒木、武藤の各委員と、修習生)。

1 クリーンパーク臨海

今回訪れたクリーンパーク臨海は、貝塚の近く、博多湾に臨んだ地点に位置する2001年4月に稼働を開始したばかりの大型焼却施設を中心とする施設です。福岡市環境局施設部臨海工場の工場長である、真藤正明さんの御案内で施設を見学し、お話を伺いました。

福岡市及びその周辺地域の家庭から出る可燃ゴミは、4つの焼却施設で焼却処理されています。この施設はそのうちの一つで、24時間連続運転のストーカ炉で、1日300トンの焼却能力を持つ炉が3基という、巨大な焼却場です。

クリーンパークという名称は、焼却施設を中心として、リサイクルプラザや、焼却により発生する余熱を利用する施設(タラソ福岡)などの付帯施設を包括する構\想に基づくものだそうです。

搬入された可燃ゴミは、ゴミピットにいれられ、ゴミクレーンにより攪拌され、ゴミ質の均質化が図られます。その後、焼却炉のホッパに投入され、1時間ほど乾燥された後、焼却炉に入ります。ここでは、ストーカと呼ばれる、可燃ゴミを少しずつ前に押しやっていく装置により、燃焼を続けながら、可燃ゴミは焼却炉の下部にゆっくりと押されて行きます。燃焼ガスはボイラに入り、その熱は発電にも利用されながら、減温装置、バグフィルター、排ガス洗浄装置、再加熱器、触媒脱臭装置を通って煙突から排出されます。

焼却施設の見学については、小学4年生向けの内容とはいえ、施設の内容や、見学の順路を明らかにしてゆくハイテク技術を駆使したシステムにより、分かりやすく行われました。ただ、肝心の焼却炉や、その後の排ガスの処理システムについての見学がほとんどなかったのが残念でした。

ダイオキシン類の排出基準(0.1ng-TEQ/Nm3)を守る設計ということなので、ゴミ問題に重大な関心を持つ委員から次々に質問が出て、たいへん活発な質疑応答がなされました。

3基ある焼却炉ですが、炉ごとに1年に1回、1か月ないし1.5か月定期修理を行い、1年に半月は全炉を止めて点検を行うそうで、2基を常時運転させるというのが原則だということでした。

ゴミ質は、30%ないし40%が水分で、35%程度が紙ゴミ、15ないし20%がプラスチック、10ないし15%が生ゴミです。

一番難しいのがゴミの均質化で、水分が多かったり、プラスチックが少ないと、燃焼が不均質になり、ゴミ投入により燃焼温度が下がりすぎるそうです。クレーンによるゴミの攪拌により、焼却に適したゴミを「作る」のだ、という説明がなされました。

焼却炉の燃焼室の温度を850℃以上に保つための手段として、ストーカの下から吹き込む空気の量を調節したり、ストーカがゴミを送る速度を調節したりするということでした。

ボイラ出口の排ガス温度は300℃であり、エコノマイザの部位に来てようやく200℃になるということでした。

本件施設では、排ガス洗浄という処理過程(塩酸や硫黄酸化物などをとる湿式のシステム)が少し変わった処理ではないかと思います。

質疑の中で特におもしろいと思われるのは、以下のやりとりです(少しマニアックですが)。

  1. ガス化溶融炉を採用しなかったのはなぜですか?−実績がないからです。
  2. 立ち上げ、立ち下げ時は、850℃にしてからゴミを投入するなどの方法をとっているのですか?−いいえ。バーナーで400℃にしてからゴミを入れ始めます。すると徐々に温度が850℃に達していきます。立ち上げ、立ち下げ時の低温下はやむを得ないと考えています。

なお、T委員は、リサイクルプラザで販売していた古書をたくさん購入し、資源循環の取り組みを実践しておられました。

2 和白干潟

4600億円をかけて遂行されている人工島埋め立て事業では、異例にも知事の意見書として「環境に与える影響を懸念」する内容であったほど、和白干潟に対する大きな打撃が予想されています。

現地は、渡り鳥の2通りの渡りのルートが交差しているところで、極めて多様な生物が観察される貴重な干潟です。堀委員長の熱い説明と、双眼鏡の先のツクシガモ、オナガガモ、ミヤコドリなどを見ながら、これらの生物は、誰の利益のためにその生活環境を奪われるのだろうか、ということを考えざるを得ませんでした。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー