弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

司法(警察)

2013年4月13日

著者  香納 諒一 、 出版  角川春樹事務所

現在(いま)を生きる意味を問う警察小説の誕生。これは本のオビにあるコピーです。
 著者の警察小説を初めて読みました。警察内部の人事の葛藤が描かれているのはほかの警察小説と同じです。やはり、どろどろした人間模様がないと単なる犯人探しの推理小説になってしまいます。この本を読みながら高村薫の『マークスの山』そして佐々木譲の『警官の血』を思い出しました。
 私と同世代の学生運動はなやかりしころの男女が登場してくるのです。私とは違って過激派のセクト活動家です。そこに、警察官が潜入捜査する話が登場します。要するにスパイです。これは本当にたくさんいたようです。それを体験した人の告白本もあります。ただ、所在をくらますため、地下に潜ったときハウスキーパーの女性の話まで出てきました。戦前の共産党員の地下活動にはあったようですが、戦後1960年代に本当にあったのでしょうか。私には信じられない話です。そんなことしなくても同棲自体は珍しくなかったわけですので・・・。
 警察署長はキャリア組。キャリアが「責任を持ちます」という類の言葉を口にしても、それを決して信じられない。このことはノンキャリアの警察官ならばだれでも知っている。
 キャリア組は自分の成績を上げるためなら何でもするし、責任回避もすごくうまいということですね。
 警察内部で非行を見たとき、バカ正直にそれを問題とすると、必ず報復があり左遷される。カラ領収書づくりが問題になったとき、そのことは明らかとなりましたね。
 政治家が登場し、地元の土建業者が利権をあさっているなかで、古い白骨死体が工事現場で発見されます。そこに居合わせたのが認知症の老婆。はたして両者に関連性があるのか・・・。
 筋書きはあちらこちらに飛んでいき、やがて一つに収束していきます。
(2013年1月刊。1800円+税)

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2012年12月23日

64

著者  横山 秀夫 、 出版  文芸春秋

64(ロクヨン)とは、昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件。迷宮入りとなり、D県警史上最悪と記録されている事件のこと。
 さすが、この著者の警察小説は読ませます。圧倒的な迫力ですので、一日で一気に読みあげました。それこそ、寝食忘れて、と言いたいところですが、ホテルに泊まったとき、食事はルームサービスでとって、食べながら読みふけりました。
 あり得ないよな、こんなストーリー・・・。と思いつつ、刑事部と警務部が全面的に対決し、ついには刑事部の全員が籠城する騒ぎに発展するのです。それも、刑事部長が叩き上げから、キャリア警察官の指定されたポストに「格上げ」、つまり召し上げようという動きの中で事態は進行していきます。警察内部のいかにもどろどろした人間模様のなかで、新しい誘拐事件が発生するのです。
 たくさんの伏線が巧みに張られていますので、最後まで話がどう展開していくのか読めずに、目を離せません。
舞台は県警広報室。広報室は不幸な生い立ちを背負わされた。情報を一元化するための窓口でありながら、入ってくる情報の量と速度は「離島」に近い。協力的なのは、交通安全施策をPRしたがる交通部くらいのもの。警務部は記者を飼い馴らせと無理難題を言ってくる。記者たちは広報室をなめきっている。刑事部と記者室のあいだにはさまって広報室は翻弄され、消耗する。そして、広報室は被疑者の実名を報道せずに、記者室の猛反発を買う。ボイコット寸前の状況だ。
 県警本部長はキャリアの警察官僚。地方警察は、そうした「雲上人」をせっせと育成してきた。耳障りのいい情報だけをご注進し、そうでない情報はすべて遮断する。在任中の本部長に機嫌良くいてもらうことのみに汲々としている。
 常に本部長室を無菌状態に保ち、地方警察の実情も悩みも知らせることなく、サロン的な日々を過ごさせる。そして、企業団体からかき集めた高額のお金を本部長の懐に押し込んで東京に送り返す。
 被疑者の留置管理は、警務部の所管だが、実際には刑事部のテリトリーだ。組織図の上では刑事部と切り離されているが、生粋の警務畑の人間だけで留置場を運営している警察など、D県警に一つもない。
 肩書きは警務課員であっても、刑事の経験者や刑事見習いの看守が相当数で、日中の取調を終えて房に戻った留置人の言動に目を光らせ、逐一刑事課に報告をあげている。ようするに、留置場内の情報は刑事部があまさず握っていながら、ひとたび留置管理に問題が生じたときには、「外面」である警務部が責任を負わされるということ。
 久留米の富永孝太朗弁護士より、まだ読んでいないのならすぐに読むよう強くすすめられた本です。期待にしっかりこたえてくれた本でした。
(2012年10月刊。1900円+税)

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2012年12月21日

となりの闇社会

著者  一橋 文哉 、 出版  PHP新書

なげ福岡県だけ、こんなに暴力団による事件が頻発するのでしょうか?
本当に恥ずかしいことです。公共工事の談合・調整役を暴力団がつとめていて、それを主な資金源としています。つまるところ、大型公共工事も私たちの税金でまかなわれているわけですから、市民が間接的に暴力団を養っているようなものです。これでは、いくら暴力追放の市民集会をやっても暴力団は根絶できませんよね。
 公共構造をもっとガラス張りにして、暴力団が談合・調整役にならないようにしなくてはいけません。そのためには、旧来の自民党型政治家の口利きもふくめて、介入を許さないように必要があります。なにしろ、昔から公共工事の総工事費の3%が政治家と暴力団に流れていくというのですから・・・。
 暴力団はかつて自分たちに協力したり取引関係にあった企業や人物をターゲットにして襲っている。なるほど、そうなのでしょう。根は深いのです。
 大手証券会社と暴力団の癒着も昔からありました。総会屋も、その一つの手法です。第一勧銀は、暴力団(大物総会屋)に208億円もの融資をしています。86回にわたった合計額です。それで、結局、第一勧銀の元会長の方が自宅で首吊り自殺をしていました。
野村證券もまがまがしいダークサイドがあると指摘されています。金融庁は2012年8月、インサイダー取引について業務改善命令を出している。証券業界のガリバーと言われる野村證券の体質は20年前から変わっていない。
政治・土建・興行が「ヤクザの三大産業」と呼ばれてきた。
 これは昔も今も変わりませんね。政治と闇社会は文字どおり世の中の表と裏である。
 代議士秘書をパイプ役にして、公共事業の根回しや談合、選挙前の各業界への票のとりまとめ活動や対抗勢力への妨害、自らのスキャンダルつぶしなどを依頼している。
 大型公共事業の受注をめぐっては、いまだに暴力団や政治団体など、闇社会が仕切っているケースが多く見られる。ゆすり、たかり、そして株主総会ともめごと処理の用心棒だ。モンスタークレーマー、とくに闇社会と連携した知能犯罪者たちの大量攻撃は熾烈で、各企業は頭を悩ませている。
 「架空請求屋」は、「名簿屋」から出会い系サイトの利用者リストを1人20円程度で購入し、あとは電話をかけるだけ。とくに調査や戦略を練るわけでもなく、何一つ苦労も努力もせずに、きわめて低いリスクで多額の利益を得ることができる。
架空請求屋は、毎日午前8時すぎに出勤し、夜10時過ぎに退社するまで、「名簿屋」から購入した出会い系サイトの利用者リストをもとに電話をかけまくる。一日の架電ノルマは300~400件。一人につき月1000万円以下の利益目標が揚げられ、怠けたくても怠けるわけにはいかない。自分の上げた利益の1割が報酬としてもらえる。
あるグループは月の利益は平均5000万。メンバー一人あたりの平均月収は70万円。全体の80%ほどの4000万円前後を暴力団幹部に上納していた。ある振り込め詐欺グループのボスは37歳、地方の国立大学を卒業している。
 社長は、経営戦略と人材育成を担当している。メンバーは総勢50人、5人の営業部長がいる。部員は一日じゅうマンションの部屋にこもって電話をかける。食事も出前をとるか、コンビニ弁当やパン。他人の視線を避け、3ヵ月以内に転居する.
欠勤、遅刻、早退は、その日の取り分がゼロになる。報酬の分配率は、リーダーが20%、各営業部が45%。
人材育成のため、6人の「生徒」が3週間にわたって合宿生活を送る。ベテラン詐欺師やマルチ商法主帝者、犯罪心理学者、弁護士と言った各界の専門家を講師に迎え、詐欺の理論と実践、歴史、心理業などを学ぶ。続いて演技指導や模擬試験を受け、最後は実施訓練となる。この訓練を通じて、「電話一本でカネになる」魅力を知り、カモになるのは相手を見きわめたり、標的の心をコントロールできるテクニックを磨き、喜びを知る。
 契約締結のコツは値引きと緊迫感。
 これはリフォーム詐欺集団のベテラン営業マンの言葉です。これだけ欺す方が訓練を受けているのですから、被害回復も容易でないのも当然ですね。といっても、心寂しい人間の集団なんでしょうね、詐欺師って。無駄な人生を送っているのに気がつかないのが哀れです。
実務上も、とても参考になる本でした。
(2012年10月刊。760円+税)
 11月に受けたフランス語検定試験(準1級)の結果を知らせるハガキが届きました。恐る恐る開いてみると、まずは合格の文字が目に飛び込んできて、ほっとしました。得点は81点(合格基準は74点)ですから、まだ7割はとれていません。受験直後の自己採点も81点でした。ぴったりだったのに、我ながら驚きました。
 ところで、今の選挙制度はひどいですよね。4割の得票で8割の議席を占めるなんて、小選挙区制度は本当におかしいと思います。自民党は得票を大きく減らしているのに「大勝」だなんて、とんでもありません。国民の意思がきちんと反映されないシステムです。

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2012年9月17日

特高警察

著者   荻野 富士夫 、 出版    岩波新書 

 なく子も黙るトッコーケーサツ。今では知らない若者も増えていますね。その恐るべき特高警察について要領よくまとめた新書です。
 戦前の日本で拷問による虐殺80人、拷問による獄中死114人、病気による獄中死1503人。ところが、特高警察は、表向きは拷問死を否定した。しかし、その一方で、その後の取り調べにあたって、「お前も小林多喜二のようにしてやるぞ、覚悟しろ」と恫喝するのを常とした。
 昭和天皇即位の「大礼」(1928年)や各地への行幸時には、警察による全国一斉の、関係地方の「戸口調査」が実施された。この「戸口調査」は、「巡回連絡」として、現在も実施されている。「戸口調査」や「巡回連絡」は、一般警察官が担当するが、それらの情報は戦前なら特高警察、現代では警備公安警察が集約している。
 特高警察の存続した期間は、1911年(明治44年)から1945年(昭和20年)までの35年間だった。
 1928年2月の衆議院議員の初めての普通選挙で、日本共産党は党員の立候補やビラの配布など、公然と姿をあらわにした。これに危機感を強めた田中義一内閣は警察と検察を動員して、3月15日未明、1道3府27県で、共産党員の関係者を一斉検挙した。検挙された者は1600人。うち起訴されたのは488人。国内における治安維持法の本格的発動となった。田中内閣は4月10日に事件を公表し「赤化」の恐怖を振りまいた。
 特高警察は、官僚制のなかでも、もっとも強固な中央集権制を特質とする、その中枢・頭脳であり、指揮センターの役割を果たしていたのは、一貫して内務省警保局保安課だった。
 日米開戦直前の広義の特高警察の人員は1万人をこえただろう。二層構造からなる特高警察が、その機能を発揮するうえで不可欠だったのは、一般警察官の特高知識と情報の探査・報告だった。
 特高警察にあっては、事件が起きるのは、むしろ失態であった。ことが起きる前に未然防止することが重視された。特高警察にとっての生命線は情報だった。
共産党員と同調する人々が拷問を受けるのは、天皇に歯向かう「悪逆不逞」の壁をこえていく人だから、「悪逆不逞の輩」なので、国体護持のためには、どのような取調手法も許容されるはずだという暗黙の意識があった。
特高警察とは何だったのか?
戦前の日本における自由・平等・平和への志向を抑圧・統制し、総力戦体制の遂行を保障した警察機構・機能と言えよう。それは、日本国内にとどまらず、植民地、傀儡国家におよび、法を逸脱した暴力の行使により多くの犠牲を生みだした。「国体」護持を揚げて、人権の蹂躙と抑圧に猛威を振るった組織なのである。
 2011年は、大逆事件を直接の契機として警視庁に特高警察課が創設されてから100年目だった。
 現代日本に、こんなひどい警察組織をよみがえらせてはいけないと痛感しました。
(2012年5月刊。800円+税)

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2012年1月19日

国家と情勢

著者   青木理・梓澤和幸ほか 、 出版   現代書館

この本を読むと、警察って罪なき人々を無用に関しして、「犯罪」をつくりあげるところなんだなという感想と同時に、こんなマル秘のデータが外部に流出するなんて、日本の警察もたいしたことない役所だね、そんな哀れみすら覚えます。
後者のきわめつけは、国際テロリズム緊急展開班の班員名簿として13人の現職警察官の個人情報が詳細に記載されたものが外部に公表されていることです。なにしろ、公安機動捜査隊第三公安捜査班所属で警部補とか、自宅の住所、家族全員の氏名・年齢、職業、同居の有無、健康状態まで記載されています(2008年9月12日現在)。この本では黒塗りしてありますが、どうやら顔写真もついているようです。先日のアメリカ映画『フェア・ゲーム』じゃありませんけど、当局がCIA捜査官を自ら暴露したのとまるで同じです。
 今回流出した警察資料の大半は日本のイスラム教徒関係の監視状況をまとめたレポートです。何も犯罪とは関係ないのに、イスラム教徒だからというだけで監視対象として尾行・監視していたというのは許せませんし、まったく税金の無駄づかいの典型です。400頁もある分厚い本ですが、その半分以上は流出した資料です。黒塗りしてありますので、「面白さ」は半減しますが、これが自分のことだったらぞっとしますよね。ですから黒塗りするのは当然です。ところが、黒塗りしないまま公刊しようとした出版社があるというのですから驚きました。さすがに裁判所は出版差止を命じたようです。
 情報が流出したのは、2010年10月30日のこと。流出した資料は114点、1000頁ほど。警察は、流出した情報が警察由来のものだとなかなか認めず、2ヶ月後にようやく認めた。この差によって、被害拡大を防止する措置が遅れた。
 警視庁では、1995年当時、刑事部の捜査第1課に300人の捜査員がいた。ところが、公安部公安第1課は、それより多い350人もいた。刑事より公安が多いだなんて・・・。
 ながく警察官僚のエリートコース、出世コースは警備・公安部内とされてきた。警察庁長官は、ずっと警備・公安部門の要職を歴任した人物で独占されてきた。
 ところが、今や公安警察はジリ貧状態にある。公安部公安第1課も230人になっている。そして、2002年、警視庁公安部に新設された外事第3課は、34年ぶりに新しくもうけられた課である。公安警察がじり貧状態から抜け出し、反転させられるかもしれない期待の課が新設された。この外事第3課は当初70人から今では150人もの捜査員をかかえる大世帯となった。
警視庁は都内に16あるモスクの全部について、人の出入状況、出入車両その他をことこまかく情報を収集している。そして、イスラム周辺支援組織として39団体が情報収集の対象となっている。そのなかには、国境なき医師団や、ユネスコ・アジア文化センター、はてはJICAまで監視対象団体とされている。JICAって、準政府機関ですよね。ここまで監視する警視庁って、一体何なのでしょうね・・・?
 ジャーナリストは、外事第3課がなぜできたのかという理由を、それは公安がヒマだからだと断言しています。これは、公安調査庁と同じですよね。日本共産党を監視するということで存在価値があるかのように見せてきた公安調査庁は共産党が国会でそれなりに定着して、一定の支持を得てしまうと無用の長物視され、あやうく廃止寸前にまで追い込まれてしまいました。それを救ったのが、かのオウム真理教でした。でも、オウム真理教の監視って、なにも捜査能力もない公安調査庁がやらなくたっていいのですよね。それなのに、まだ居座ったままです。公務員減らしをやるとすれば、まっ先に公安調査庁を対象とすべきだと私は思います。
 同じジャーナリストは、150人の捜査員のいる外事第3課の生き残り策として、イスラム教関係者の監視をするという「仕事」をつくり出したのだと断言しています。
 あーあ、やんなっちゃいますね。無用の仕事、まったくの税金のムダづかい、そして、罪なき人を危うく「犯罪」者に仕立てあげ、世間の誤解をかきたてる。自分の子どもに、お父ちゃんの仕事は何をしているんだと胸をはって言えるものではありませんよね。これって・・・。哀れです。そして、こうやって情報が流出していき、個人情報が広く流出してしまうと、それが一人歩きして、あたかもテロリストと関係あるかのように世間から誤解されてしまうのですから、たまったものではありません。
 アメリカでも似たようなことが起きていると聞きましたが、日本でもこんなことが起きているのですね。恐ろしい世の中です。

(2011年10月刊。2200円+税)

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2011年12月14日

恥さらし

著者  稲葉 圭昭      、 出版  講談社   

 北海道警の有名な「悪徳刑事」の告白です。懲役9年の実刑に服して出所してきて、自分が何をしたのか、北海道警がどう関わったのかを実名で明らかにしています。恐るべき警察告発本です。
 佐々木譲の警察小説の多くは、この本の著者の挙動をネタ元にしています。しかし、本人が書いていますので、小説とはまた一味ちがった迫真力があります。それにしても、オビに大書されていますが、覚せい剤130キロ、大麻2トン、拳銃100丁が北海道警の関与のもとで日本に密輸されて、その所在が分からないままとなっているなんて、とても信じられません。日本の警察というのは想像以上に腐敗しているようです。そう言えば、警察の裏金問題も、いつのまにかウヤムヤになってしまいましたね・・・・。著者は、2003年4月21日、懲役9年、罰金160万円に処するという判決を受けました。
 26年間にわたる人生の警察官人生のなかで、数多くの違法行為に手を染めてきた。捜索差押許可状(ガサ状)なく強制捜査、犯意誘発型のおとり捜査、所有者の分からないクビなし拳銃の押収、覚せい剤と大麻の密輸、密売、そして使用。組織ぐるみで行われる違法捜査によって感覚は完全に麻痺し、正と邪の区別がつかなくなってしまっていた。
 著者がスパイ(エス)として使っていた人物は拘置所内で自殺し、元上司も公園内で首吊り自殺した。
ヤクザのシノギを警察官が斡旋する。しかも、警察庁キャリアOBが関与して行われていた。そのとき、1000万円もの現金が動いた。
 ガサ状を取るための調書は刑事が適当に作文し、ほかの警察官に調書のサインと指印をしてもらう。しかし、この虚偽内容の公文書作成が問題になることはない。公判に出てくることはないからだ。
所持者不明の拳銃。いわゆるクビなし拳銃の押収は、銃器対策が本格化した平成5年以降、警察庁のお墨つきを得た。それまでは所有者不明のクビなし拳銃を押収するのは恥ずべき捜査だったが、むしろ奨励されるようになった。クビなし拳銃の押収は、拳銃の所有者を逮捕しないために手軽に見える反面、捜査員が暴力団に「借り」を作ってしまう危険がある。
 しかし、自首減免規定が銃刀法改正でもうけられたあと、著者はこの規定をよりどころとして、暴力団関係者を自首させた。
 拳銃密輸入を検挙するため著者は東京で潜入捜査し、危うく発覚してしまいそうになりました。柔道による耳の形を取引相手の暴力団が気がついて、怪しんだためです。そのときは、とっさに相棒がレスリングをやっていたからだとごまかしてくれて、窮地を抜け出せました。
著者は覚せい剤の密売に手を染め、アジトとしたマンションには、数百万円から数千万円の札束がぎっしりという状態にまでなった。そして、拳銃の保管庫にしていた車庫には、多いときで100丁近い拳銃を保管していた。
 これって、信じられない金額と数字ですよね。そして、覚せい剤中毒患者になっていくなかで、著者のつかっていたエス(スパイ)が逮捕されたとき、裁判官にぶっつけ告白したのでした。
 ここに書かれている警察の体質が改まったと本当に言えるのでしょうか・・・・。心配でなりません。事実は小説より奇なりとは、よく言ったものです。下手な警察小説には見られない真相が語られて、ド迫力があります。ぜひ、ご一読ください。
(2011年6月刊。760円+税)

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2011年11月27日

警察の条件

著者  佐々木 譲  、 出版 新潮社   

 警察小説シリーズです。今回は読んでいると、『新宿鮫』を髣髴とさせました。ハード・ボイルド調なのです。私の好みは前作「警官の血」です。警官三代の生き様を描いていて、世相もよく反映した迫真のストーリーには息を呑みました。
 潜入捜査員が登場します。まさに生命かけの仕事ですよね。耳が柔道によるタコが出来ているのを見られて警察官と見破られたという話を読んだことがあります。警察官が柔道場でいつも練習していることで出来る耳のタコなのです。たしかに暴力団員には少ないのでしょうね。
 刑務所は、暴力団にとって重要な会社説明会の場だ。懲役刑を受けた暴力団員は刑務所内で、どれほど稼ぎがよいか、どれほど派手で華やかな生活をしてきたかを、おおげさに吹聴する。一日にどれだけ遊びに使ったか、どれほど女にもてたか、どれほど快楽ざんまいの日々を過ごしてきたかを自慢する。
 そして、これぞと思う囚人に、出所後は面倒を見るぞと声をかける。収監者の中には、ならば自分も暴力団員として生きようと決める者が必ず出てくる。暴力団員としての「資格保証」は国家がやってくれている。暴力団の側も安心して使うことができる。
 ましてや組が解散して行きどころのないような暴力団員は大歓迎だ。いきなり戦力になる。この業界でも、身元のしっかりした経験者は優遇されるのだ。
 そうなんですよね。刑務所の中では悪の道へますます深まっていく危険があります。決して単純に更生の機会が保障されているというものではありません。
 多くの暴力団は、覚せい剤の売買を構成員に禁じている。しかし、巨大な利益を生むビジネスであり、シマの中で素人や外国人の好き放題にさせるほど、どの組も甘くはない。準構成員にやらせて、その後ろ楯になる。上がりを組として吸い上げる。こんなシステムをつくっている。
 覚せい剤事件を国選弁護でよく担当しますが、いつも末端の売人か使用した人間のみが被告人となります。上層部のほうを担当したことは、自慢じゃありませんが、一度もありません。
この本には不祥事を起こした幹部警察官がやがて現職当時の地位のまま復職するという場面が出てきます。たしかに、現実にもそんなことがあったように思います。それでも、それってなんだか割り切れない疑問を感じます。
 それにしても、現場の警察官は毎日大変なんだなあと概嘆してしまいました。

(2011年9月刊。1900円+税)

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2011年10月29日

密売人

著者  佐々木 譲  、 出版  角川春樹事務所   

 うまいですねぇ・・・・。いつ読んでも、この著者の警察小説はほれぼれしてしまいます。情景描写といい、ストーリーといい、なるほど、そうか、そうだろうなと思わずうなずき、ぐいぐいと作中の部隊に引きずり込まれてしまいます。
 本書のタイトルからすると、覚せい剤とか拳銃の密売人を扱っているかと思わせますが、違います。では、何を売ったのか・・・・?
暴対法ができて、そのあと6、7年前が、警察庁が全国一の暴力団の徹底し壊滅を指示して以来、やつらは本当に食えなくなっている。私文書虚偽記載で組長逮捕だ。型式犯だ。子分が銃刀法違反で、何も知らない組長が6年の実兄だ。以前なら考えられないような微罪で逮捕、刑務所送り。昔ながらのしのぎも成立しなくなっている。上の連中は逮捕覚悟で俠客の看板を掲げているが、日々、実入りは少なくなっている。義理かけもままならなくなっているが、いまの組長クラスだ。
こんなセリフがありますが、本当でしょうか。
 福岡県内は暴力団の密度が日本有数に高いので有名です。中州も、北九州も、そして、筑豊も筑後も、至るところで鉄砲の弾が飛びかっています。それは、暴力団同士というのもありますが、主としてゼネコンなど土木・建築会社がターゲットになっています。公共工事の3%ルールをこれまでどおり守れというヤミ社会からの催告かつ警告の弾丸です。
 いま九州新幹線の乗車率の低さが問題となっています。事前の予想乗車率の3割しかない駅があります。田舎の田んぼの真ん中に忽然として誕生した新幹線駅は、まさしく政治家と暴力団が私たちの血税を喰いものにしている象徴です。
 そんなことを考えたとき、暴力団が不景気だというのも、にわかに信じる気にはなません。先日の久留米の組長宅襲撃事件では、ついにマシンガン(機関銃)まで登場してきました。恐ろしい世の中です。
 この本では、警察の上層部と暴力団の癒着も暴かれています。お互い、持ちつ持たれつの関係があるというのです。これまた許せないことです。そう言えば、この間の一連の発砲事件で、犯人が警察に逮捕されたなんて、聞いたことありませんよね。どうなっているのでしょうか・・・・。もっと、しっかりしてくださいな、警察官の皆さん。

(2011年8月刊。1600円+税)

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2011年10月27日

公安は誰をマークしているか

著者  大島  真生    、 出版   新潮新書   

 公安警察というと、今でもなんだかうす汚い、陰でコソコソ、スパイをあやつっている陰気な集団というイメージがあります。
 かつては共産党をスパイし、企業に共産党員情報を高く売りつけて存在意義を誇示していました。ところが、今では企業内での露骨な差別待遇が裁判所によって弾劾されてやりにくくなり、公安警察の存在意義もすっかり薄れてしまいました。とりわけ公安調査庁という、人間の盲腸みたいに不要な機関が今でも残っているのは常識では理解できないところです。
 警視庁公安部は、公安警察最強の実働部隊で、「公安の中の公安」とも言うべき存在。桜田門にそびえる18階建ての警視庁本部庁舎の13階から15階まで、3フロアーを占めている。公安部の人員は1100人。このほか各警察署の警備・公安担当が1200人いる。
 公安警察は、警察庁警備局を中心に、戦前の特高警察時代のシステムを密かに残している。それは、たてまえとして自治体警察だが、警視庁公安部や道府県警警備部は予算を握る警察庁警備局から直接指示を受ける立場にある。上意下達の国家警察システムがそっと残されているのかが公安警察である。指示系統は、縦に統一されていて、そのなかには道府県警本長や警察署長は入っていない。つまり、署長の部下という意識は希薄だ。
警視庁の刑事は、公安部員を「ハム」と侮辱的に呼んでいて、「ハムの奴らは信用できない」と、よく口にする。これに対して、公安部員は、自らを「オレたちは国を守る仕事をしている」という意識が強く、刑事警察より高い次元にいるというプライドを持っている。
 公安総務部(コウソウ)は公安部の筆頭課であり、共産党対策を主とする。公安部の部長、参事官2人、総務課長の4首脳のうち3人はキャリア組で、残る1人は「たたき上げ」と決まっている。
 公安部はスパイをつくる作業に従事している。この作業は警察庁警備局が報告を受けながら管理している。公安部の作業班の名称は4係、ナカノ、サクラ、チヨダ、ゼロと変遷した。
 スパイ(協力者と呼ぶ)にできるかどうか、何度か会って感触を確かめるのを「面接」、協力者にスパイ活動させることを「運営」するという。協力者と密かに会うことを、「接触」、運営にかかる資金は「運営費」、接触にかかる資金は接触費用などと呼ぶ。運営費とは、要するに報酬だ。接触費用は協力者に飲み食いさせる代金である。
公安の担当範囲は、近年恐ろしく広くなっている。NHKの次期会長候補にスキャンダルがないかまで調査にあたった。公明党情報をふくめて、幅広く政治家などの情報を集めている。ただ、これも肝心の共産党の活動が下火になったため、組織を維持するために対象範囲を広げざるをえなかったということにもある。
 一般には知られざる公安警察の活動の一端を知ることのできる本です。
(2011年9月刊。720円+税)

 今、全世界で「1%が支配する社会でいいのか」という問いかけとともに若者たちが行動を起こしています。日本ではまだまだ動きが鈍いのがもどかしくてなりません。
 ところで、先日の新聞に日産のカルロス・ゴーン会長の年間報酬が9億8200万円であり、これは昨年より9100万円もの「賃上げ」があったこと、ソニーのハワード・ストリンガー会長は8億6300万円で、これまた昨年より3850万円も「賃上げ」されていることが報じられていました。ひどいですよね、許せませんよね。「99%」の労働者には賃下げ、首切り、非正規雇用を押しつけておいて、自分たちは8億円とか10億円近い年収をもらっていながら、さらに9千万円とか4千万円近く「賃上げ」をお手盛りで決める。これは異常な社会と言うべきではないでしょうか。もっと私たちは怒るべきですし、怒りを行動に示すべきだと思います。

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2010年11月23日

くにおの警察官人生

 著者 斉藤 邦雄、 共同文化社 出版 
 
 2004年、北海道警の裏金問題を初めに告発したのは、元警視長で元道警の釧路方面本部長でもあった原田宏治氏でした。著者は、原田氏に続いて裏帳簿を提供して告発を裏付けた弟子屈(てしかが)警察署の元次長です。まことに勇気ある人々です。心より敬意を表します。
 このお二人が趣味のサイクリングで仲間だったことは、本書を読んで初めて知りました。著者は私と同じ団塊世代です。警察学校の教官を2回も経験していますので、警察官として優秀であったことは間違いありません。
 この本は、「市民の目フォーラム北海道」のホームページにブログ「くにおの警察日記」を連載していたのを一冊の本にまとめたものですので、肩のこらない、大変読みやすい内容になっています。
 裏金づくりに加担させられ、ニセ領収書を作成した口止め料として、北見警察署に着任早々、防犯課長から毎月3千円をもらった。1973年のことである。裏金づくり、そしてその利用は古くからあり、また広い範囲で根づいていた。このことが、体験をふまえことこまかに具体的に紹介されています。
裏金を使うのは、あくまでも上層部の特権である。書類をもっともらしく作らなければならないのは、下っ端の庶務係だった。いやはや、すまじきものは宮仕え、ですよね。
 暴力団組長に捜査情報を流し、かつ暴力団組長とゴルフで遊びまくる。そんな警察官が全国優秀警察職員表彰を受けることがある。なんとなんと、そんなこともあるのですか・・・・。
 いま、新しい裏金づくりの手口がある。物品が納められていないのに納入されたことにして代金を支払い、業者にそのお金を管理させる、いわゆる「預け」。このほか、業者に事実とは異なる請求書を出させて別の物品を納入させる「差し替え」などである。民間企業を巻き込む手口は、止まるところを知らず、エスカレートする一方である。
 警察官の仕事の大変さも知ることのできる本でした。
 
(2010年8月刊。1600円+税)

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