弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生き物(ゾウ)

2014年8月25日

象にささやく男


著者  ローレンス・アンソニー 、 出版  築地書館

 アフリカで野生のゾウの保護のために奮闘した男性の話です。
 残念なことに、1950年生まれの著者は、2012年に心臓発作のために亡くなっています。
 そのとき、ゾウたちが長い道のりを後進して、「弔問」にやって来たそうです。ゾウは超能力をもっているのです。
アフリカ象は40万頭から65万頭ほど。ところが、2011年だけで2万5000頭が殺された。象牙のために密漁団が暗躍している。日本も印鑑のために、その象牙の密輸入国です。
 オスのゾウはメスよりも人間に近づかれても平気だ。その理由は簡単。大きなオスは、自分を守る能力に大変自信をもっているから、人間が近づいても、その分、大丈夫なのだ。ゾウが小さくなればなるほど、自信がなくなるので、より大きな空間を要求する。ゾウは、自分のことを皇帝のように偉い存在だと思っている。
 野生のゾウとつきあいたいのなら、こちらから近づいていってはならない。ゾウのほうから近づいて来るのを待つべきだ。ゾウが近づいてこないのなら、あきらめるしかない。
 ゾウにとっての不変の原則は、すべての生き物は、自分たちに譲るべきだということ。
 アフリカの野生の生き物は、最初はぐらつくにしても、生後すぐに歩き始める。地面に赤ん坊が横たわっているのでは、どうぞ召し上がってくださいとお願いしているようなもの。捕食動物の格好のおやつになってしまう。身体の大きいゾウにしても、生まれたら、出来るだけ早くその場をあとにする。胎盤の臭いで、肉食動物が集まってくるから。
 ゾウの仲間(家族)が死ぬと、ゾウたちが周囲をぐるりと取り囲む。そして、遺骨になってしまったあとも、近くを通りかかると歩みを止め、臭いをかぎながらその骨を突っつきまわし、おもちゃのようにして戯れる。それは、ゾウの亡き者を偲ぶ一つに儀式だった。
ゾウは、地球上で唯一、飛び跳ねることのできない動物である。だから、飛びおりることもできない。
 ゾウは人間の可聴周波数帯よりはるかに低いゴロゴロという音を胃のあたりで発し、数キロ離れた先からもそれを聞きとることができる。
 ゾウは金属の肌触りが好きらしく、放っておくと、何時間も自動車の車体に触り続けている。エンジンの発する熱も大好きで、とくに寒いときがそうだが、鼻をボンネットの上に長いことくっつけたままにしている。
 ゾウは、人間のゆっくりした落ち着いた動きを好む。人間が近づくときには、わざとらしく草を手で折ったり、止まって木の様を調べたりして、時間をかせぎながら、ゆっくり近づいていく。すると、鼻が伸びてきて、人間の身体に優しく触れる。
 ゾウと心を通わせるまでの苦労、そして、ゾウたちの集団との関わりが、てらいなく紹介されています。仔ゾウに、一度は触ってみたいものだと思いました。
ゾウの賢さを改めて認識させられる本でもあります。
(2014年2月刊。2600円+税)

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2011年12月10日

森の奥の巨神たち

著者   鈴木 直樹 、 出版   角川学芸出版

 タイの森に棲むアジアゾウの生態がロボットカメラも駆使して、よく撮られています。
 象って、家族愛がすごいんですね。みんなで赤ちゃん象を守り育てていくのです。17歳になったらオスの象は一人立ちします。自由気ままな一人暮らしを楽しむのです。でも、一人立ちしてすぐのころには、元いた母親の群れに戻って甘えることもあるといいますから、まるで人間と同じだなと、つい苦笑いしていました。
 著者によると、動物園で飼われている象と野生の象とでは、まったく別の生き物といってよいほど違う存在だということです。飼われている象は、本来持っている機能、能力、知識のかなりの部分を失っているということです。
 象を森の中に追いかけているうちに、彼らの持っている、人間ですら共感できるほどにはっきりした誇りや意思、さらには細やかな愛情に接することができた。
 象は、まったく人を恐れない動物である。象は、遠い昔から人間のやることをずっとみてきていて、その力を見切っているようである。親から子どもへ、「人間って、たいしたことない」というのを知識として教えている節がある。
 子象の写真がたくさんあります。ほのぼのとした光景です。子象が母親に甘え、子象がイタズラをして大人象たちから叱られているとしか思えない写真まであります。子象たち同士も仲良しで、一緒に遊びます。
 ロボットカメラを使って、人間では撮れない貴重な場面がいくつもある、楽しい象の写真集です。
(2011年10月刊。3200円+税)


同窓会の話の続きです。
私のクラスでは法曹界にすすんだのが私一人だけなのです。珍しいと思います。ちなみに駒場寮の6人部屋からは3人が法曹界にすすみました(私のほかは裁判官2人です)。
銀行員商社マンになった人が多数でした。長い人で累計21年、短い人でも6年くらい海外にいましたということでした。20年も海外にいて、日本のことがよく分からなくなったといいますが、そのとおりだろうなと思いました。団塊世代は、世代の人数比の割には社長が少ないとよく言われます。社長は50代前半ということが大会社でも珍しくはありません。今回は欠席でしたが、一人だけ大会社の現役の社長をつとめています。もう長いよね?と訊くと、いやまだ3年だよ、大会社の場合、社長は6年くらいはやるものだからというコメントが返ってきました。
参加者に現役の社長が何人もいました。大手商社から独立して社長になったり、子会社に移って社長になったりした人たちです。さすがに社長の貫禄がありました。それでも、副社長のときは気楽だったのに、社長となると大変だとこぼしていました。なるほど、そうなんでしょうね。(続く)

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2010年6月28日

ゾウと巡る季節

 著者 大西 信吾 、彩流社 出版 
 
  すごい、すごい。感嘆しながら、そして心をときめかせながらめくっていった写真集です。ミャンマー(ビルマ)の森深くでゾウと人間が共働している姿がよく撮られています。
 なかでも深く心が動かされ、まさに感動したのは、仔ゾウを人間づけしていく経過を紹介する写真です。いやはや、ゾウと人間というのは、一朝一夕でなしうるものではないのですね。あまりの素晴らしさに、見終わって、ついつい嘆息をついてしまいました。
ミャンマーの森の奥深くにゾウと人間が入り込んで、伐採した大木を運び出す仕事に徒事します。ゾウは仔ゾウのときから飼い慣らされているとはいえ、仕事が終わったら、また、仕事の合い間にも森の中で自由に暮らす。
 これがすごいですよね。ゾウは、ずっとオリの中に拘束されているのではありません。森の中で自由に過ごせるのです。それでも、また人間と一緒になって木材運搬の仕事に従事するというのです。それは、不思議としか言いようがありません。
森の中に入ると、人間は作業キャンプ(飯場)を付近の竹でこしらえる。そして、大木を切り出していく。そして、森の中にいるゾウを探し出し、川でゾウの身体を丁寧に洗ってやり、大木の運搬の仕事につかせる。
ここでは、トラックやトラクターは使えない。アマゾンのようにブルドーザーで一本道をこしらえたら別だろうけど、あくまで自然との共生が第一だ。そして、ゾウの健康状態をチェックする地域獣医官が巡回してくる。
うひゃあ、すごいですね。ゾウの健康を管理する専門の獣医がいるのです・・・・。
伐採した丸太を山あり谷ありをこえてトラックで運び出せるところまで持っていくのは、やはりゾウしか出来ないんだろうなという写真がたっぷりあります。ゾウは文句も言わずに、がんばります。母ゾウ54歳、仔ゾウ1歳。父親は行方知らずの野生ゾウ。こんなキャプションがついています。
 人間で54歳の母親が出産するなんて、あるのでしょうか・・・。
 仔ゾウは、母親ゾウのそばを離れない習性から作業班と共に行動する。かといって、決して人間になついているわけではない。放っておくと確実に野生むき出しの獣になる。4歳のころ、高さ1メートル50センチになったころに使役ゾウとしての訓練を開始する。それは訓練専門キャンプで行う。
子ゾウの自由を奪う。生まれて初めて自由を奪われた子ゾウは、とことん抵抗する。ゾウ使いは、おとなしくするように鉄拳制圧するが、目、口、関節などは避ける。
 そして、常に誰かが子ゾウの身体のあちこちに触り、背中に乗り、人の感覚に慣らせていく。昼も夜も朝も・・・・。
子ゾウの体調については、獣医官が常に管理している。子ゾウの身体には、拘束している木で擦り傷を負わないように、豚の油を絶えず塗っておく。
人の間隔に慣れてきたら、子ゾウの拘束を少しゆるめ、根気強くスキンシップを続け、少しずつ動作を学習させていく。
盲導犬と同じように、人や仲間のゾウと歩調をあわせて歩けることが、使役ゾウの学ぶべき最初の基本動作である。最初に覚えさせる指示語は、座れと立て。座れの大合唱とともにロープで子ゾウの脚を引っぱって力ずくで伏せさせ、立ての号令とともにロープをゆるめて立たせる。これを何度も繰り返す。
人間の感覚に慣れ、抵抗の度合いが弱まってきたなら、長い鎖で杭につなぐ。行動半径は限られているが、自分で歩く自由は得られる。一週間でこの段階まで来たら上出来だ。地道な訓練を2年ほど続けたあと、やっと荷かごを背中に乗せられるようになる。それでも、ゾウはなかなかまっすぐには歩かない。15歳までは荷物運搬専門に働き、16歳から丸太を動かす訓練を始め、搬出現場デビューは18歳のとき。ゾウ使いは、ずっと同じ人間であることが望ましい。
50歳をこえたら、徐々に仕事量を減らし、引退する。軽い仕事をする程度で、ゾウ使いとは一生続き、70歳ころにゾウは生涯を終える。
ゾウと人間の森の中でのゆっくりと時間が流れていく情景が紹介されている感激の写真集です。ぜひ、手にとってご覧ください。
(2010年3月刊。3800円+税)

 サッカーで日本が勝っています。うれしいことです。でも、今は大切な参議院選挙が進行中です。消費税を10%にすることの是非が問われています。ギリシャのようにならないためと言われてもピンときません。
 消費税10%は、法人税率の引き下げと抱き合わせです。強い日本を作るためだそうです。
 日本の大企業の経営者が、何十人も年1億円以上の給料をもらっていることが報道されました。月収1000万円ということです。私の周りの人の多くは、その100分の1、月収10万円前後の人ばかりです。それでも仕事がある人はまだましなのです。こんな高給を払えるほどもうかっている大企業の法人税を引き下げ、私たち庶民のフトコロを直撃する消費税を10%に引き上げたら、所得格差はますます進行してしまいます。
 ところがマスコミは、消費税が日本の国民にどんな影響をもたらすのか、法人税の引き下げが本当に必要なことか十分に報道しているとは思えません。消費税の引き上げを是として国民をリードしている気がします。
 サッカー報道が過熱していくなかで、いつのまにか消費税10%が既定の事実となることを、私は真面目に心配しています。

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2008年2月12日

ゾウ!

 これは凄い写真集だ。オビに書かれた文句ですが、文字どおり信じていい写真集です。野生のゾウの素晴らしい写真が満載です。こんなに近くで野生ゾウを写真にとれるなんて、すごいことです。
 まず、1枚目のアフリカの乾いた大地を砂嵐をまき起こしながら進むゾウの大群の迫力に圧倒されます。そして、2枚目は、大自然とはうって変わって、人工的にペインティングされ、ごてごてと派手な衣裳を着せられたインドのお祭りに参加しているゾウに呆気にとられます。
 ゾウは人間と同じ家族構成をもっている。ゾウはお互いの信頼を大切にし、地域への愛着心をもつ。個体それぞれが特有の個性をもち、互いに低いグルグルという声で話しあうことさえする。幼い子ゾウの叫び声を聞くと、あまえる人間の赤ん坊を思い起こす。ゾウは偉大さを感じさせる動物である。
 ゾウの魂は人間そっくりだ。水飲み場で水をかけあって遊ぶ子ゾウをお母さんゾウは愛情あふれる目で見守る。いたずらな赤ん坊ゾウがあまり深いところに行くと、お母さんゾウがさっさと引き戻す。お母さんゾウが、もうおしまい、行くわよ、といえば誰もがただちに、さからうことなく、いつもいっしょに、やってきた時と同じようにキビキビと引き揚げていく。
 ゾウも人間と同じように、親を失った孤児の悲惨な環境で育つと、しばしばひどい情緒障害に陥る。
 年上のオスゾウは、自分がすることを見せて、大人のゾウの考え方を年下の若いオスに伝え、導く。若いオスが強暴になる(マストといいます)前に、群れを支配する年上のオスがいると、問題行動は起きない。
 ゾウの体は実にさまざまな色を発散する。日没時にはゾウの体に反射した光でゾウはピンク色。夜は青色で、朝にはオレンジ色になる。土ぼこりをかぶったゾウは茶色である。ゾウは色彩に富んだ動物である。
 なるほど、ゾウの色といえば、せいぜい茶色か泥まみれの灰色しか思いつきません。でも、この写真集には、たしかにさまざまな色のゾウが登場してきます。
 アフリカの水飲み場で、あまり大きくない子ゾウは自由に水飲み場に近づくことが許される。しかし、青年期から上の世代のゾウは、強くなければ池の縁に近づけない。ほかのゾウから押し戻され、順番はなかなかまわってこない。
 この100年間にゾウは1000万頭から50万頭にまで減ってしまった。ゾウのすむ国は46ヶ国だったのが、今や5ヶ国のみ。
 かつてアフリカの人々は、白人のハンターがゾウを狩るために船に乗って探検隊をつくって驚くほど多くのゾウを殺しまくる理由がさっぱり理解できなかった。かつて象牙はピアノの鍵盤をつくる最高級の材料とされていた。象牙は触感がよく、指の汗をほどよく吸収する。人間の音楽のために多くのゾウが殺された。
 かつてイギリスのビクトリア朝時代には、ビリヤードの球が象牙からつくられていた。一つの競技テーブルでつかう1セットの球をつくるのに2頭のオスゾウの牙が必要だった。
 ゾウは人間と同じようにいやな経験を忘れない。ゾウは個性的で、人間と同じように怒りやすい個体もいれば、おとなしいものもいる。いやな経験を恨みに思って復讐するものも、根がおだやかで平和的なものもいる。ゾウの個性は、祖先から受け継いだ遺伝的な素養と経験との不思議な組みあわせによっている。
 ゾウは体に空調装置を備えている。大きな耳はその一部で、パタパタとうちわのようにふって暑さを防いでいる。朝から昼へと気温が上昇するにつれ、耳のうちわをふるテンポが早くなる。大きな耳がたてたそよ風は、耳の血管を流れる血液をひやすばかりでなく、体をわたって体から熱を奪う。
 ゾウの長い鼻は、あらゆる動物の様々な器官の中で最高傑作といっていい。それは、手、唇、鼻を見事に統合したもので、多様な機能を兼ね備えている。ゾウは鼻で木を倒す。木をもち上げ、水を吸って吹き上げ、トランペットのように響く大きな鳴き声を発し、小さな一粒の植物のタネをつまみあげる。鼻は、きわめて敏感な長くのびるアンテナであって、空に向かってつきあげて風の運ぶ危険な臭いをかぎあてる。
 そして、強力な武器でもある。
 鼻で目に入ったゴミをとり、仲間のなでて安心させる。鼻をからめあう親愛の情のあらわしかたは、素晴らしい表現方法だ。
 足の裏と足の骨との間には、厚い繊維組織のクッションが働いて、接地の衝撃をやわらげる。
 海の中を泳ぐゾウの写真があります。タイでゾウが木材運びのため海に入って泳ぐのです。泳いでいるゾウって実にユーモラスな写真です。
 少々値がはる写真集ですが、ゾウの保存にささやかな貢献をしたいと思って買って手にとってみてください。
(2007年9月刊。6800円+税)

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