福岡県弁護士会の弁護士・職員の読んだ本・オススメの本

2007年04月27日

子犬のカイがやって来て

著者:清野恵理子、出版社:幻冬舎
 犬好きの人にはこたえられない本です。スソアキコの絵もまたいいんですよ。ワンちゃんが実に愛らしく生き生きしています。まさに、犬に笑い、犬に泣く本なのです。
 イギリスからラブラドールの子犬が届きます。ひょろっとしていて、お世辞にも可愛いと言えない妙なおっさん顔。目は小さい。たちまち寝息をたてる天使のようなカイ。
 ところが、初対面のカイが殊勝におとなしくしていたのは、長時間の空旅による疲労のせい。ぐっすり眠って、お腹いっぱい食べて元気を取り戻したカイのパワーは、予想をはるかに上まわった。
 まあ、その腕白ぶりをこれでもか、これでもかと紹介していくことになるわけですが、それがまた犬好きにはたまらないんですよね。たとえば。防犯システムの特別なリモコンを見つけてガシガシかじったばかりに、パトカー6台が出動する騒動を起こしてしまう。
 やんちゃ盛りの犬たちが日々繰り広げる悪戯に、ついついご近所に聞こえそうな大きな声も出す。そのたびにカイたちは、「大変なことをしてしまって、本当に申し訳ない」とばかりに、がっくりと首をうなだれ、殊勝な様子で尻尾を落とす。それでも、声を張り上げる飼い主の興奮がおさまるのを、しばらく我慢して待ちさえすれば、何事もなかったように甘えられることをちゃんと知っている。上目づかいで見つめられれば、それまですごい剣幕で叱っていた飼い主も、ついほっぺたが緩む。そうなると、カイたちの思うつぼ。あっという間に、ターボエンジン全開の腕白小僧に逆戻りしてしまう。
 犬も人間の幼児のように、特定の縫いぐるみを気にいることがあるというのに驚きました。熊の縫いぐるみに執心したワンちゃんがいたのです。
 著者は八ヶ岳のふもとに別荘をもち、冬と夏などを犬と一緒に過ごす。犬たちは生まれつき人間を友だちと思っているふしがあり、ためらうことなく体当たりで甘えてくる。
 犬種による性格の違いはたしかにある。柴犬やハスキーはシャイで、少しだけ距離をとってこちらを観察している。時折、気が向けば遠慮がちにやって来て、人間に背中を向けてお座りし、なでてと健気な様子で催促する。眠るのは、リビングのソファーや部屋の隅においた座布団の上で、あくまでも慎ましさを忘れない。
 しかし、「待て」をさせられていたレトリバー犬たちは、「よし」の号令で、ベッドに飛び乗ってくる。暗黙のポジション決めがなされているらしく、それぞれの定位置に落ち着くと、安心したように寝息をたてて眠る。掛け布団の上だから、40キロの体重の犬たちに囲まれて眠ると、からだ中に布を巻かれたミイラの状態で、寝苦しいことこの上ない。
 犬たちは言葉こそ話はしないが、目や尻尾、からだ全部をつかって饒舌に思いのたけを私たち人間に伝えようとする。なかでも目がすごい。私たちを信じきった無垢なまなざしに勝てる術はなく、いつだって勝利をおさめるのは、彼ら犬たちである。
 うーん、そうなんですよね。福岡の斉藤副会長も3歳のラブラドールを飼っていて、毎朝、早朝から海岸を散歩させているそうです。いいですよね。うらやましいです。

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2007年07月09日

犬も平気でうそをつく?

著者:スタンレー・コレン、出版社:文春文庫
 犬の鼻は、よく見ると、こまかい畝ができている。この模様と鼻孔の輪郭で構成される鼻紋は、人間の指紋のように個体によって違い、一つとして同じものはない。
 犬は人間より積極的に臭いを集める。左右の鼻孔を別々に動かして、臭いがどの方向から来たかを探る。そして、一瞬、息をとめて臭いを嗅ぐ。犬の鼻がいつも冷たく濡れているのは、匂いの分子を集めやすくするため。鼻の中には、こまかい毛のようなものがあり、それが匂いの分子を鼻腔へと送りこむ。この毛状のものが溶けた匂いの分子を内側へ押していき、匂いを感じとる特別な細胞の近くに分子を集める。この仕組みを常に効果的にはたらかせるためには、大量の粘液が必要になる。
 人間の嗅細胞は500万個しかないが、ジャーマン・シェパードは2億2,500万個ももっている。最高はブラッドハウンドで3億個。だから、1グラムの酪酸を10階建のビルの中で蒸発させても犬は嗅ぎ分けることができる。
 これに反して、犬の視力は、最高で0.26しかない。犬は飼い主が動いているときは1.5キロ離れても見分けることができるが、動かないとわずか90メートルしか離れていなくても見分けられない。ただし、犬の視界は270度ある。
 犬は人間ほど味にこだわらない。犬の味蕾(みらい)は、人間の5分の1しかない。犬は塩分をほしがらないし、敏感でもない。それは肉食だから。肉にはナトリウムが含まれている。犬は慣れ親しんだ味より、新しい味を好む。新しいもの好きだ。
 犬のヒゲが切られると、犬は不安になり、ストレスを感じる。そして、自分の周囲を十分に感じとれなくなる。
 犬は、人間と違って痛みを表現せず、じっとガマンする。群れの仲間から襲われないためだ。だから犬が痛みをあらわすのは、身を守るためのガマンを限界を超えたということ。
 犬は抱かれることをいやがる。動きを制限され、拘束されたように感じるからだ。
 犬が生まれて3週目から12週目までの期間内に人間にふれあうことが大切で、それによって子犬は人間との関係に自信をもつ、知らない人を怖がらなくなる。生まれて8週間きょうだいと一緒に育った子犬に比べて、すぐに引き離された子犬は、相手を強くかんでしまう傾向がある。
 生後10週目までにまったく罰を受けずに育った子犬は、ほとんど訓練不可能な犬になる。犬に罰を正しく与えるのは、非常に難しい。不適切な懲罰は、犬に非常にマイナスの心理的影響を与え、飼い主と犬とのきずなを完全に壊してしまう。
 10歳以上の犬の62%に認知症の症状があると推定されている。認知症でない健康な老犬でも、加齢によって頭の働きは鈍ってくる。
 うちの犬は、自分を人間だと思っている。この考えは間違っている。犬は、私たち人間を犬だと思っている。二本足で歩く、妙な姿をした犬。犬的な行動に完全に反応できない、あまり頭の良くない犬。こう思っている。
 犬は人間について、擬犬化をしている。だからこそ、犬は、ほかの犬にするように人間に向かって尾をふり、前脚をのばして遊びに誘うおじぎをし、人間の匂いをかいでいるのだ。
 最後に、この本のタイトルにあるとおり、犬はほかの犬も人間に対してもうそをつくことができます。だますのもゲームのうちなんです。
 古くからの人間の良き友、犬についてまたまた認識を深めることのできる本でした。
 雨の少ない梅雨になりそうだというので、水不足の夏になるのかと心配していましたが、このところ大雨が降っています。蝉の鳴き声を7月2日に一度だけ聞きましたが、その後は、雨のため地上に出てこれないようです。実は鳴き声を聞く前、まだ雨の降らない6月末(6月30日だったと思います)に蝉の死骸が路上に落ちているのを早くも見つけ、えっ、今年は早いなあと思ったものでした。参院選も今週から始まります。世の中をいい方向に変えたいものですよね。

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2007年08月27日

終生、ヒトのオスは飼わず

著者:米原万里、出版社:文藝春秋
 いかにも著者ごのみのタイトルです。実は、これは、自分で書いた死亡記事のタイトルでした。多くの著名人が自分の死亡記事を書いていて、文春文庫『私の死亡記事』になっています。それによると、著者は2025年に75歳で死んだことになっています。
 この本の大半は、雑誌『ドッグワールド』の2003年5月から2005年12月まで32回にわたって連載されたエッセイがおさめられています。要するに、著者の親愛なる家族たち(犬と猫のことです)の、大変でもあり、愛らしくもある行状記です。いやいや、ペットを飼うというのは大変なことだと思いました。
 猫にミドニングというのがあるのを初めて知りました。
 ミドニングとはトイレの場所を間違えたり、排便しそこねて外にしてしまうというものではなく、きわめてはっきりした行為である。猫はトイレ以外の特定の場所を選び、そこに糞を残すことによって、なわばりの占有・使用・通行などの権利を示そうとする。およそ、前から少し神経質だとか、気の弱い性質の猫が、何らかの大きな変化やチャレンジに遭遇したとき、こうなることが多い。
 著者は飼い猫(龍馬という名前です)をしっかり抱きしめ、そのストレスを軽減させることによって、その症状を半年で完治させたのです。獣医師は感嘆の声を上げました。うむむ、なるほど、ですね。
 著者のペットに対する愛情の深さを示すエピソードを紹介します。飼犬(ゲン)が落雷のあった日に家をとび出して行方不明になってしまいました。そのあと、著者はなんと1年にわたって、4日に一度、近くの動物管理事務所に電話を入れて確認したのです。犬はそこに保護されると5日目には薬殺処理へ回されてしまう。だから、その前日、4日目の午後4時から5時に、動物管理事務所に電話を入れる。それは、日本国内にいようと、アメリカにいたときも、チェコにいたときも、4日に一度の電話を欠かしたことはなかった。そして、それを1年も続けた、というのです。すごーい、頭が下がります。
 犬は、たしかに雷をひどく怖がります。私が子どものころ飼っていたスピッツ犬(ルミという名のオス犬で、座敷犬でした)は、雷鳴を聞くと、家中を走りまわったあげく、押し入れの奥に頭を突っこんで、全身をブルブル震わせていました。哀れなほどです。
 結局、ゲンは出てきませんでした。きっと、どこかの家で飼われたのだろうと思います。なかなか頭の良い犬だったようですから、おおいにありうることと思います。
 私が小学1年生のとき、我が家は大きな引っ越しをしました。同じ市内でしたが、トラックに乗って引っ越したのです。そして、その途中で、飼犬(ペット)がいなくなってしましました。泣き叫んで、親にバカバカ、どうして、どうして、と大声で抗議したことを今もはっきり覚えています。
 猫一般の常識がある。見知らぬ猫であれ、子猫には優しくすることになっているようだ。たとえば子猫が食べ終わってからでないと、大人猫は食べない。同居していた親しい仲間の猫が死んだとき、猫たちはいつもの夕食の催促をせず、ほとんど口をつけなかった。
 真夜中、死んだ猫の周囲にしっかり目を見開いて座り、まんじりともせず夜を明かした。
 ええーっ、これって、まさにお通夜の光景ではありませんか。驚いてしまいます。猫がお通夜をしてるなんて・・・。今では人間社会のお通夜はほとんど形式ばかりになってしまいましたのに・・・。
 共産党の高名な代議士(米原いたる)の長女として生まれた著者は、小学3年生のときチェコスロバキアに両親とともに渡ります。著者の年譜によると、チェコにいたのは5年間ほどのようです。私はもっと長くいたのかと思っていました。
 父の米原いたる代議士も語学の才能があったようです。英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語ができたというのです。でしたら、著者の語学力は父親譲りの才能だったのでしょうね。
 何回も繰り返しますが、本当に惜しい人を早々と亡くしてしまいました。75歳まで生きて、大いに世間に対して毒舌もふるってほしかったと思います。残念でなりません。それにしても、ヒトのオスも飼っていてほしかったですね・・・。
 日曜日の朝、異変を感じました。妙に静かすぎるのです。蝉の声がまったくしません。うむむ、これは一体どうしたことだろう。わが家の庭木で鳴かないどころか、近隣でもまったく蝉が鳴いていません。夏の終わりを告げるツクツク法師もクマ蝉も鳴いていないのです。連日の猛暑のために蝉たちも一休みしているのでしょうか・・・。
 蝉の声といえば、10年以上前、南フランスで一夏を過ごしたことがあります。フランスの蝉の鳴き声はジジジジと、とても単調です。しかも、めったにいません。ですから、フランスの夏は、日本と違って基本的に静かです。ついフランスでの夏の朝まで連想してしまいました。また南フランス、プロヴァンスに行きたくなりました。そうなんです。すごく料理が美味しいんです。よーし、来夏は、行ってこようっと・・・。
(2007年5月刊。1381円+税)

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2007年10月12日

犬と私の10の約束

著者:川口 晴、出版社:文藝春秋
 犬好きの人にはこたえられない感動本です。可愛らしいゴールデンレトリバー犬の仔犬の写真が入っていて、まるで実話の世界です。
 犬の名前はソックス。友だちがつけた名前はタビ。たしかに、写真を見ると、右足の先っぽだけ白色になっていて、まるで靴下をはいているかのようです。
 犬を飼うときには、犬と10の約束をしないといけない。それが守れないのなら飼ってはダメだし、飼っているあいだは、この約束をいつも思い出すこと。
1、犬語は分かりにくいかもしれないけれど、私と気長につきあってくださいね。
2、私を信じて。それだけで私は幸せです。
3、私にも心があることを忘れないで。
4、言うことをきかないときは、理由があります。
5、私にたくさん話しかけて。人のことばは話せないけれど、わかっています。
6、ケンカはやめようね。本気になったら私が勝っちゃうよ。
7、私が年齢(とし)をとっても仲良くしてください。
8、私は10年くらいしか生きられません。だから、一緒にいる時間を大切にしようね。9、あなたには学校もあるし、友だちもいるよね。でも、私にはしかいません。
10、あなたと過ごした時間を忘れません。お願いです。私が死ぬとき、そばにいてね。 どうか覚えていてください。私があなたを愛していたことを。
 なーるほど、いい約束ですね。でも、人間って、すぐ自分の都合で動いて、こんな約束をしたことを忘れてしまうんですよね。
 私が小学生のころ飼っていたのはスピッツ犬で、座敷犬でした。上も下もかまわず歩いていましたから、畳の上はいつもザラザラしていました。今なら、とてもそんなことは耐えられませんが、一家5人(そうです。子どもが5人もいて、私は末っ子なのでした。姉たちにおしめをかえてもらっていたそうですが、もちろん、そんな記憶は私にはありません)、だれも気にせず、平気で犬と同居していました。ルミ(オスのスピッツ犬なのですが、勝手にそう呼んでいました)は、私が大学に入って1年もしないうちに、家の前の道路で車にはねられて死んでしまいました。だから、私は死に目には会えませんでした。遠く、東京で泣きました。恐らく老衰して、足がよく動かなくなっていたので、モタモタしているうちに車にはねられてしまったのでしょう。
 ゴールデンレトリバーも、大きくなるのはすごく速いんですね。大きくなったソックスの写真もあります。映画になるそうです。見てみたいですね。
 朝7時すぎ、雨戸を開けると清々しい純白の芙蓉の花がこぼれんばかりに咲いています。夕方には赫い花になってしまう酔芙蓉がいま盛りです。下の田んぼの稲刈りが終わって、スッキリしました。ヒマワリを刈りとり、見通しのよい庭になりました。チューリップやアネモネなど、春の花を少しずつ植えています。土いじりは楽しい作業です。
(2007年7月刊。1143円+税)

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2007年11月22日

犬はきらい?

著者:エミリー・ヨッフェ、出版社:早川書房
 私は犬派です。猫は、どうしても好きになれません。幼いころから、ずっと我が家に犬が飼われていたので、犬にはすごくなじみがありますが、猫はいませんでしたので、なんとなく敬遠してしまいます。
 猫と犬とは根本的に違う。犬は美人コンテスト出場者のようなもので、他人を喜ばせたいと思っている。サーシャ(著者の飼い犬)は、家の中で粗相すると著者が怒ると理解してからは失敗しない。猫はスーパーモデルのようなもので、他人に喜ばせてもらいたいと思っている。
 なーるほど、そうなんですね・・・。私は犬が散歩しているのを見ると、犬の表情を見ます。生き生きとした犬の顔を見ると、私までうれしくなってきます。
 猫の知性を試す方法は、まずない。猫はごほうびに釣られないため、賢さをはかるのは難しい。それこそ猫が人間というものを天才的に理解している証拠だ。はいはい、それをやればエサをくれるっていうんだね。でも、知ってるんだ。ここに寝そべって、のんびりうたた寝したり毛づくろいしたりしていても、結局は、エサをもらえるんだよね。
 むむむっ、敵は見抜いていたのか・・・。
 猫が粗相するのには理由がある。たとえば飼主夫婦の結婚生活に緊張が生じているから。夫婦が離婚してしまうと、猫の粗相も止む。ええっ、そうなんですか・・・。
 犬を飼い慣らすことの面白さに味をしめた人間は、夢中になって、次々と動物を家畜化していった。イノシシも豚として飼いはじめた。それが農業に変革をもたらし、やがては近代の文明化につながっていく。
 ロシアで驚くべき実験がやられた。野生のギンギツネを飼育した。個体の人間に対する反応を調べ、生まれつき人慣れしたキツネ同士をかけあわせていった。すると、わずか6世代で子孫のなかに人間を恐れない、それどころか人間のそばにいたがる個体が誕生した。さらに数世代を経ると、行動だけでなく、ぶち模様の毛や垂れた耳をもつ子どもが生まれた。キツネの犬化がはじまりかけていた。
 うひゃあ、そういうことができるのですか。本当なんでしょうか。
 ペットの飼い主にとっての最大の悩みは、犬においては攻撃的であること、猫においてはトイレ以外の場所に粗相すること。
 子犬の発達のためには生後16週間までの時期が重要だ。原則として、犬の生涯にわたる社会性は、この16週間で決まる。
 オオカミには、集団での狩りを成功させるには大きな脳を必要とする。しかし、捨ててある鶏の足をかぎつけて食べる犬には大きな脳は必要ない。人間にとって、犬の知性の後退はプラスとなった。
 ビーグル犬を飼い、一時預かりに挑戦する著者の犬との共存日記です。ベッドでも犬と一緒に寝ているようですが、本当でしょうか。犬好きの私でも、とても考えられません。でも、猫を冬の寒いときに湯たんぽがわりにしている人は多いようですから、そういう人も多いのでしょうね。
 私の家でも、私が高校生までスピッツを座敷犬として飼っていましたから、家のなかはいつもザラザラしていました。そのころは何とも思わず平気でしたが、今では、とても耐えられません
(2007年10月刊。1333円+税)

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2008年02月08日

犬語の話し方

著者:スタンレー・コレン、出版社:文春文庫
 人は、強い犬よりも、怯えた不安な犬にかまれるほうが多い。
 犬から威嚇されたときは、どうしたらいいか。まず第一に、背中を向けて走り出してはいけない。犬の追跡本能を刺激してしまうから。第二に、視線をやや横斜め下に落として、一、二度まばたきをする。これは服従を示し和解を求める反応だ。そして、口を少し開いて、犬が攻撃をしかけたら受けて立つ構えを示す。次に、ゆっくり二、三歩うしろに下がる。そのとき、犬とは絶対に目を合わせない。なんとか呼吸を整えられたら、顔を少し横に向けてあくびをするか、高い声でなだめるように何か話しかける。犬とのあいだに十分な距離があいたら、犬に対して横向きになるように体を回す。このとき犬が近づいてきたら、ふたたび犬と向きあい、大げさに何度かまばたきをし、横斜め下に視線を落とし、もう一度ゆっくりうしろに下がる。犬に対して横向きになったときに、犬の興奮や威嚇の度合いに変化がなければ、ゆっくり、犬と視線を合わせることなく、自然な足どりで遠ざかる。
 いやあ、難しいですね、これって。できるでしょうかね、こんなことが自然に・・・。
 犬のオスはセックスに常に関心があるものの、実際に性欲をかきたてられるのは、発情期のメスを目の前にしたり、その匂いをかいだときだけ。メスは交尾の態勢が整って積極的になるのは、年2回の短い発情期のときだけ。
 メスの発情期は、21日間続き、3つの段階がある。第一の段階は、発情前期で、9日間ほど続く。この時期のメスは、ひどく落ちつかなく、さかんに歩きまわる。水を飲む量がふえ、歩く先々で放尿する。この尿の匂いがオスをひきつける。犬の場合、出血は排卵の前に起こり、膣の壁に変化が生じて排卵の用意が整ったあかしとなる。メスは性的魅力たっぷりの香水を尿と一緒にあたりに振りまき、膣分泌物の匂いを風とともに運び、だれかれかまわずオスを誘う。だけどメスは、夢中になったオスたちをはねつける。
 メスは、オスをじらせているのではない。まだ排卵していないのだ。排卵は本当の意味の発情期に入って2日目くらいに起こる。分泌物の水分が多くなり、色が透明になると、交尾に対して膣の準備が整ったことになる。そして、排卵があっても、精子に対する卵子の受け入れ態勢が整うまでに、およそ72時間かかる。排卵期は2、3日しか続かないので、それまでに自分のまわりに大勢のオスをひきつけておき、いざというときに選べるようにしておくのが肝心なのだ。たいてい、選択権はメスにある。父親候補は、強い拒絶にあうものと、熱心に求められるものとに分かれる。
 進化は、すぐれた遺伝子を残すには、優位な強いオスを選んだほうがいいという知恵をメスに与えた。野生の犬に比べて家犬は、それほど交尾の相手を選ばない。これは人間による意図的な犬種をつくる計画のことである。
 犬の気持ちが手にとるように分かります。本のオビに、このように書いてあります。たしかに、犬の生態について、また深く知ることができました。
(2007年9月刊。705円+税)
 

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2008年02月18日

犬の科学

著者:スティーブン・ブディアンスキー、出版社:築地書館
 アメリカの犬は人間への咬みつき事故を年間100万件以上おこす。その被害者の多くは子どもで、年に12件は人が死んでいる。保険会社は犬による傷害事件で年に2億5000万ドルを支払っており、傷害保険費用の総額は10億ドルをこす。
 犬は、体重あたり人間の2倍の食糧を消費する。アメリカにいる1500万頭の犬は、ロサンゼルスの全人口と同じ量の食料を消費し、その費用は年に50億ドルをこえる。獣医にかかる費用が年に70億ドル。アメリカの公園や街路で回収される犬の糞は年に  200万トン。
 狼は犬ではない。原始犬の体型が化石となって残るよりはるか以前に、犬は狼から分かれて犬になっていた。犬は、狼より人間と親しくなった。犬の出現は、広く信じられている以上に古い出来事だった。
 300をこす現代犬の犬種は、過去2世紀内の、ごく最近に登場した。1870年にケネル・クラスが設立され、80種の犬を分類して登録した。
 化石によると、犬の体型の変化は、1万4000年前に始まった。
 犬の遺伝子プールは、何万年もの進化の過程で、世界中でよく混ぜあわされ、均質な大海のようなものになっている。
 犬は成犬でも子どもっぽく見える行動をする。犬はエサをねだり、子犬のような格好の服従姿勢を示し、必要もないのに吠えるし、大きくなっても遊び好きだ。野生狼にみられる狩猟行動のパターンを明らかに失っている。犬は、成長することのない子狼のようなものだ。
 狼たちも犬たちも、すべて出世主義者である。目上の者の弱み、躊躇、自信喪失の徴候をうかがっている。
 狼の群れの移動は、しばしば、リーダーに無条件に従うのではなく、多数決で決める。
 狼のアルファ雄とアルファ雌は、ふつう後肢を上げて排尿する。群れのほかのメンバーは、しゃがんで用を足す。
 犬には、広い場所をきれいにしておく本能がないだけではなく、反対に、すみかの周辺をくまなく糞や尿でマークしたくなる衝動がある。
 生後14週まで、まったく人間と接触しなかった子犬は、強い恐怖感を示し、床に静かに腰をおろしている人間に決して接触しようとはしなかった。
 子犬には、3週齢から12週齢の間の臨界期がある。子犬が人間を何とも思わず、恐れないようになるのは、生後3週間目に人間と接触するのが好ましく、いくら遅くとも7週目までのこと。
 子犬を6週齢で母犬や兄弟姉妹の犬と引き離すと、その後の健康にも、社会化にも悪影響がある。6週齢で子犬を新しい家庭に移すと、12週齢のときより強い不安感を示し、食欲も病気に対する抵抗力も低下する。子犬は生後2ヶ月間で、社会規範について決定的に重要な知識を獲得する。
 犬は、あらゆる点で狼と同じくらい利口だし、チンパンジーにも匹敵する。
 しかし、犬の脳は狼より25%は小さい。犬を訓練するのにエサを与える必要はない。実は、労働それ自体が犬にとっての喜びなのだ。犬にとって最高の報酬のひとつは、社会的に優位に立つ者とのきずなが強まること。自分をあるがままに受けいれてもらえること。
 なーるほど、なるほど、よく分かりました。
 犬が思考し、感情をもっていること、まわりの人や生き物の行動に絶えず気を配っていることは、まぎれもない事実である。
 アメリカでは、年に1500万頭の犬が収容所に送られるが、獣医師によって安楽死させられる。たいていは攻撃行動が原因であり、飼い主は犬に裏切られたのだ。
 飼い主が神経症の場合は、犬が問題行動を起こす割合が高い。
 ひとたび犬が自分をお山の大将だと確信すると、誰かがその権利を剥奪しようとしたとき、犬は真剣に反撃する。犬は、自分より優位にあると感じた相手からの攻撃に対して、いっそう攻撃的な反応を示すことも、またおびえることも、絶対にない。そんなときには、犬はひたすら服従的な態度を示す。
 犬が人間なら、ただの間抜けだ。犬は犬だからすばらしい。そのことを直視しよう。うーん、納得です。犬について、科学的に知ることができました。
(2004年2月刊。2400円+税)

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2008年03月31日

犬たちがくれた音

著者:高橋うらら、出版社:金の星社
 聴導犬誕生物語、というサブ・タイトルのついた本です。現在、日本で認定されている聴導犬は10頭あまり。
 補助犬には、盲導犬、聴導犬、介助犬の三つの種類がある。
 アーク(アニマルレフェージ関西)は大阪府の山の中にある。阪神大震災のあと、1年間で600頭の動物を預かった。たとえ雨の日でも、一人一日20頭の犬を散歩させる。
 聴導犬に向いているか、いくつかのチェックポイントがある。犬が、もし、おなかを上に向けたままだっこされたり、足をさわられたりしても怒らなければ、それは人間になついて、リラックスしている証拠だ。おもちゃを取りあげられて怒る犬は不向き。なんでも自分だけのものにしたがる犬は、聴導犬の仕事に集中できない。
 このテストに合格できる犬は、300頭に1頭ほど。
 盲導犬の場合は、子犬育てのボランティアをパピー・ウォーカー(子犬と一緒に歩く人)と呼ぶ。 聴導犬についてはソーシャライザー(人間の社会にあうように育てる人)と言う。
 ソーシャライザーになる条件は、1日3時間以上、犬を一人きりにしない、室内で犬を飼えること、ほかの犬を飼っていないこと、月1回のパピー・クラスに参加できること、協会の方針に従えること、人間の子どもを育てるように、甘やかさず、愛情をもって育てられること、があげられる。
 ソーシャライザーは、預かった犬に愛情をたっぷり与え、家族の一員としてかわいがる。人と一緒に暮らしたり、人のために働くことが好きになるようにする。
 犬の育て方の基本は、犬を決して叱らず、どんどんほめて、ものを覚えさせる。
 ソーシャライザーは、やさしい言葉をかけながら子犬の相手をし、子犬がいいことをしたら、それをほめて、やる気を出させる。
 しかし、犬をいつもかまっていると、犬は相手をしてもらえないとすねるようになる。そのため、わざと短い時間だけでも、犬を無視する時間をつくる。かまってやるときは、思いきりかまってやる。すると、少しの間待つように言われても、犬は安心してじっとしていられるようになる。
 トレーニングは犬が集中できる短い時間(せいぜい15分間)だけ行い、楽しい気分で終わらせることが大切。犬がトレーニングは楽しいものだと思えば、次も喜んで人の言うことを聞こうとする。犬は、もともと人にほめられるのが大好きなのである。
 生まれて1年のあいだに、犬は人間でいうと17〜20歳に育ってしまい、性格もどんどん変わっていく。聴導犬として育てる犬には、人と同じものは食べさせない。レストランで料理をほしがったりしては困るから。犬がいたずらして困ったときには、さわがないで無視し、かまわない。騒ぐと喜んでくれたと犬は勘違いしてしまう。
 ソーシャライザーは、育てる子犬を数ヶ月ごとにほかのソーシャライザーと取り換える。これは、さまざまな環境で育つようにするため。なーるほど、ですね。
 犬のことがよく分かる本でした。といっても、犬も人間も変わらないところがあるんだなと、つい思ってしまいました。
(2007年12月刊。1300円+税)

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2008年08月12日

デキのいい犬、わるい犬、

著者:スタンレー・コレン、出版社:文春文庫
 名犬ラッシーのテレビ映画は、私も子どものころ、よく観ました。そのラッシーは、7代にわたって雄のコリーだった。雌のふりをさせられていただけだった。雄のほうが雌より体格も大きく臆病なところがないためだった。観客は、みな見事にだまされた。
 ラジオドラマがつくられたとき、吠えたのは本物の犬だったが、クンクン啼いたり、ハアハアいったり、威嚇するようにうなる声は、すべて人間の役者が受けもった。まあ、なんと犬の声優がいたというわけなんですね。
 もっとも古い家犬の確実な証拠として残っている化石は、1万4000年前のもの。旧石器時代人が連れていた。イヌ科動物の多くが、排泄のあと、近くの地面をひっかく。これは足の裏から分泌される汗に似た分泌物が、情報量は少なくても多様な情報を提供するためのもの。
 家犬は子犬的特徴をもっている。そして従順である。一生、子犬のように垂れ耳のままの犬も多い。
 犬には、自分の能力の可能性と限界を知るという自己認識能力がある。対自的能力ともいう。高すぎる壁、広すぎる溝を前にして跳躍をためらい、拒否する犬は、この種の知能を示している。
 犬は65種類の言葉と25種類の合図・身ぶりを理解する。つまり、受容できる言語は90種類である。犬の発信する言語は25種類の声と35種類の身体の表情がある。ただし、構文や文法はつかえない。
 服従に最適な犬は、頭の鈍いゴールデン・レトリバー。ゴールデンは、人間から受けた指令を理解し、人間を喜ばせたい一心でそれをこなす。飽きっぽくなく、すぐに気を散らすこともない。目の前のことを詮索しようとせず、反応の仕方を変えることもなく、人間が最初に教えたとおりを正確に実行しようとする。
 テリアが服従訓練に良い成績をあげられないのは、テリアが唯我独尊に改良されてきたため。自分たちの行動を人間がどう思うか気にもとめない。だから、服従訓練競技の会場では活躍できない。しかし、テリアはとても利口である。なるほど、なるほど。人間の言いなりになるかどうかと、犬の知能は別の次元なんですね。
 子犬は生後7週間ぐらいは、一腹子の兄弟たちと一緒にいたほうがいい。この期間に、犬らしさが育成され、犬同士を仲間と認め、ほかの犬との関わりに必要な基本行動が学びとる。次の5週間のあいだに人間と十分なふれあいをもてば、犬は人間を群れのメンバーとして受け入れる。こうして、犬は人間と円滑な相互関係をもつことができる。
 必要なことは、折りにふれて犬を1、2分間ほど拘束すること。犬に優しく話しかけながら、その口吻を数秒のあいだ手で閉じさせる。そして犬を倒して横にさせ、まる1分間は、そのままの姿勢をとらせる。そのあいだ、犬が四肢を上げないときには、脚を床から離させ、より服従的な姿勢をとらせるか、犬を仰向けにして四肢が上を向くようにさせる。この間、犬の目をまっすぐに見すえる。犬が顔をそむけたら練習を終わりにして、犬が尻尾をふり始めるまで軽く遊んでやる。
 遊びの最中に注意しなくてはいけないのは、犬が攻撃の真似をしたり牙を立てようとしたら、絶対にやめさせることである。咬みつくのを挑発するように、犬の顔の前で指をひらひらさせたりしてはいけない。綱引きもしないほうがいい。この遊びは犬の支配性を助長し、性格上、良くない影響を与えてしまう。
 犬は年をとってからでも学習できる。これって、人間と同じですよね。
 タイトルの軽さに反して、この本に書かれていることはすごく真面目なことですし、大いに勉強になります。私も子どもたちと一緒に犬を飼っていましたが、この本を読むと反省させられることばかりです。でも、旅行に行きたいので、もう犬を飼うことはあきらめています。
(2000年9月刊。657円+税)
 

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