弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

植物

2018年9月 9日

植物は「未来」を知っている


(霧山昴)
著者 ステファノ・マンクーゾ 、 出版  NHK出版

タイトルに惹かれて、いつもの喫茶店で昼食を摂りながら読みはじめたのですが、あまりの面白さに、つい食事そっちのけで読みふけってしまいました。昼休みだけでは読了できなかったので、しばし依頼者を待たせて、なんとか完読できました。
何が面白かったかというと・・・。たとえば、植物だって、しっかり記憶できることを実験で証明したということです。ええっ、どうやって、どんな実験で、そんなことを証明できるのでしょうか・・・。
オジギソウは、触れられるなど、外的刺激を受けると、その名のとおり、とても恥ずかしそうに葉を閉じる。19世紀のはじめ、フランスの植物学者、ルネ・デフォンテーヌは、たくさんのオジギソウを載せた馬車をパリ市内を走り回らせ、いつ葉を閉じるのか教え子に記録させた。すると、初めのうちは閉じていたオジギソウが、やがて葉を開いた。慣れてしまったのだ。オジギソウが記憶力をもっていなかったら、どうやって馬車の振動に慣れることができるのか・・・。オジギソウに刺激を与える実験装置をつくって実験したところ、オジギソウは、なんと最大40日も、刺激を受けたことを記憶していた。
ええっ、脳のないオジギソウが、どこで、どうやって刺激の記憶を維持できたのでしょうか・・・。
植物は、プリオン化したタンパク質を利用している可能性がある。
南米・チリのモリに育つ、つる性植物のボキラは、それぞれの宿主の葉を擬態している。
アカシアは、まずアルカロイドが豊富な甘い蜜でアリを誘惑する。アリが蜜への依存症に陥ると、次はアリの行動をコントロールし、アリの攻撃性や植物の上を移動する能力を高める。そのすべてが、蜜にふくまれる神経活性物質の量や質を調整するだけでよい。
2015年の1年間だけで、2034もの新種の植物が発見された。
人間が活用している植物は3万1千種以上にのぼる。このうち1万8千種は医療目的。6千種は食物として、1万1千種は建築用の繊維や資材として、1千3百種以上は社会的な目標をもって、1600種はエネルギー資源として、4000種は動物のエサとして使われた。
8千種は環境目的で、2万5千種は毒物として利用されている。
植物は4億年前までに、動物とは正反対の決定をくだした。動物は、必要な栄養物を見つけるために、移動することを選択した。植物は動かないことを選び、生存に必要なエネルギーを太陽から手に入れることにした。そして、植物には発達した感覚系がある。感覚系によって、環境を効率よく調査し、被害をもたらしかねない出来事に対して迅速に反応することができる。
動かないはずの植物が、実は、地球上をあちこち転々と生成・成長していること、そして、周囲の姿に似せたり、一定の刺激には順応しつつしなやかに生きのびている姿は、まるで個々の植物にも知的生命体が潜んでいるかのようです。まさしく、植物萬歳です。
(2018年3月刊。2000円+税)

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