弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

社会

2020年7月14日

秘密資金の戦後政党史


(霧山昴)
著者 名越 健郎 、 出版 新潮選書

冷戦期に活動した自民、社会、公明、民社、共産5党のうち、公明党を除く4党はアメリカとソ連から政治資金をひそかに導入していたことが、冷戦後解禁された米ソの公文書で判明した。疑惑が浮上すると、各党とも受け入れを全面否定し、日本共産党を除いてまともに調査しようともしなかった。
この本は、このことを詳細に紹介しています。その意味では、既に明らかになっていたこと詳しく裏付けているものです。ただし、岸信介については、アメリカの公文書が今でも全面解禁されてはいないようです。よほどの事情があるようですね...。
そして、共産党の野坂参三・元議長についても、アメリカのスパイ(情報提供者)だったことも、疑いにとどまっているとのことです。歴史においては、依然として闇のままというのは多いのですね...。
1963年、原水禁運動の対立のなかでソ連は日本共産党への資金援助を打ち切り、日本社会党に乗り換えた。
共産党の公式見解は党としてソ連に資金を要請したことはないし、党の財政にソ連資金が流入したこともないというものです。
岸信介については、CIAの暗号名すら今もって判明していない。それだけCIAとは深い関係にあったことを疑わせる。
野坂参三はキヨナガというCIAの「サムライ作戦」の対象になっていた。これまた、私は知りませんでした...。
CIAは、後藤田正晴とは深い関係を築いていた。
自民党へ投入されたCIA資金は54億円。今の価値にすると、10億円以上。
岸信介は、駐留米軍の撤退を求めたことからそれまで重用されていたものの、簡単に見捨てられた。これは、吉田茂と同じパターンだ。
吉田茂は、日本の急速な再軍備に反対したことから、アメリカが吉田を嫌い、退陣に追い込まれた。
CIAと自民党のあいだで行なわれたもっとも重要なやりとりは、情報とお金の交換だった。
アメリカはCIAを通じて、自民党に対して毎年200万ドルから1000万ドルの資金供給が定着し、慣例となっていた。自民党への資金の流れはCIAと駐日大使という二大ルートがあった。
大平正芳は、池田内閣の官房長官のとき、アメリカのCIAから「選挙に必要なら軍資金を供給する」という申出を受けたことがある。しかし、外国のお金は受けとれないと断わった、と述懐した。
CIAは首相官邸経由でも資金援助を行い、ハワイが受け渡しの場所だった。
アメリカの自民党への援助額は36億円とか54億円という、とんでもない巨額だった。これに比べると、ソ連から日本共産党へ提供されたのは9千万円であり、桁違いに小さい。
日本共産党へは1960年ころ、年に5万ドルとか10万ドルとされていた。
共産党は、これは野坂参三と袴田里見が個人的に受けとったものだと説明している。
そして、日本共産党の野坂と春日正一の会話までアメリカのCICに通報されている。つまりアメリカのスパイが共産党本部のトップ周辺にいたというわけです。
野坂参三がGHQのリベラル派のケーディズともよく会い話をしていたというのも初耳でした。世の中、知らないことは多いものですね...。
(2019年12月刊。1500円+税)

2020年7月 3日

女帝・小池百合子


(霧山昴)
著者 石井 妙子 、 出版 文芸春秋

中身がカラッポ。何をしようということはなく、ただ目立ちたがり屋なだけ...。もちろん、弱者救済とか環境保護というのも、まったく年頭にない。あるのは、どんな服装をして、どんなセリフを吐いたら世間受けするかということのみ。そんな女性を「救世主」かのようにもてはやし、持ち上げてきた日本の大手メディアの責任は重大だと、この本を読んで、つくづくそう思いました。
支離滅裂だけど、誰も気にしない。自信たっぷりに、美声でとうとうと話すから...。
小池百合子には仲間がいない。長くつきあっている人がいない。自分が目立つことだけを考えて他人(ひと)を利用してきた結果だ。人望がない。
築地市場を守り、豊洲移転を立ち止まって、考える。小池百合子は「ジャンヌ・ダルクになる」と言って、「築地女将(おかみ)さん会」の支持を得て都知事選挙に出て、圧勝した。ところが、小池百合子は「ジャンヌ・ダルクは、火あぶりになるからイヤ」と言った。そして、築地を見捨てて、豊洲の開設をすすめた。
小池百合子は自民党に帰順するにあたって築地を手土産(てみやげ)にしたのではないか、二階幹事長の推進するIR(カジノ)の候補地に築地を差し出したのはないか...。
希望の党の党首として、小池百合子はこう言った。
「安保法制に賛成しなかった人はアプライ(志願)してこないと思う」
「(民進党の)全員を受け入れる気はない。憲法観や安全保障で考えの一致しない方には、ご遠慮いただく」
「全員を受け入れるということは、さらさらありません」
「『排除されない』ということはございませんので、排除いたします」
選挙期間の最終日、小池百合子は夜8時に演説を終えると、その足でパリ行きの飛行機に乗った。開票結果を見守ることもしなかった。
希望の党は235人を擁立したが、当選したのは50人のみ。
小池百合子が公約としてかかげた「7つのゼロ」は、いずれも実現していない。「ペット殺処分ゼロ」も、老齢・障害・病気もちの150匹近い犬猫を殺処分したにもかかわらず、「ゼロ」だとカウントしている。
コロナ対策で東京都は明らかに遅れた。それは、小池百合子がオリンピック開催にずっとしがみついていたから。オリンピックの延期が決まり、安倍首相が小池支援を確約するや、今度は一転した「危機のリーダー」を演じるべく、連日、テレビで記者会見する。
小池百合子に親友があるとは見えてこない。同志といえる人もいない。何より、その心が見えない。だから感情がからみあわない。人間関係が希薄で、しかも長続きしない。他人に心を許さない。常に騙されるまいと思っている。用心深く、自分が生き抜くことを考え、得になる人とだけ付きあう。だから、利用価値のなくなった人、下り坂にある人との線はばっさり切り、ときには相手を悪者に仕立てる。
小池百合子は男社会と対峙するのではなく、寄り添い、男社会のなかで「名誉男性」として扱われることを好んでいた。
小池百合子は、女の皮はかぶっているけれども、中身は男性。平気ではったりができる。虚業に疑問を抱かない。見識や知識がなくても、それを上回る器用さと度胸がある。
小池百合子は政治家としてやりたいことはなく、ただ政治家がやりたいだけ。だから、常に権力者と組む。小池百合子は、ただ注目を浴びていたいだけ。
小池百合子の眼は笑っていない。孤独の深さが伝わってくる。いつも表情を作っている。
小池百合子は細川、小沢、小泉そして安倍と渡り歩いてきた。
小池百合子がエジプトのカイロ大学をちゃんと卒業したのかどうかという点では、卒業証書ではなく、卒業証明書または成績表を公表・公開すればいいのです。エジプトの政・軍部の支配下にある大学当局の卒業証明書では明らかに足りません。
この本を読んで、小池百合子は人間としては実に哀れな人だという印象を受けましたが、マスコミのつくりあげた虚像によって都知事として再選されるかもしれないとのこと。まことに、小池百合子も日本のマスコミも罪深い存在です。
いま一読に値する本です。
(2020年6月刊。1500円+税)

2020年6月28日

みんなの家


(霧山昴)
著者 光嶋 裕介 、 出版 ちくま文庫

建築家1年生の著者が内田樹邸である「凱風館」を設計し、完成させるに至った過程を語った文庫本です。
著者はアメリカ生まれで、早稲田大学の理工学部を卒業したあと、ドイツの建築設計事務所で働き、そのあと日本に帰国しました。
施主である内田樹は、言わずと知れた大学教授、哲学者そして合気道の武道家でもあります。この本を読んで麻雀愛好家でもあることを初めて知りました。
駅近くの85坪の土地に、自宅兼合気道の道場(80畳)をつくる。道場は、能楽師として活動している配偶者のため、能の敷き舞台兼用にしてほしい。また、宴会や麻雀もできるセミパブリックな場所がほしい。1人でこもる個室としての書斎は不要。
いやあ、いろいろ大変な注文がついていますね...。
これを著者は1か月間かけて考えて、3つの案をつくったのでした。3つの模型をつくって東京から神戸へ運んだのです。結論として、3案のいいところを折衷して進めていくことになりました。
建築プランが決まったら、次は材木選び。京都の美山町の杉の木を使うのです。小林直人さんが丹精こめて育てた杉の木です。
そして、次には施工する工務店選び。岐阜県加子母(かしも)村を本拠とする、木造建築の技術に定評のある中島工務店を選びました。
中島工務店は山林も管理していて、その隣には「木曽ヒノキ備林」がある。伊勢神宮の式年遷宮のときに伐り出される樹齢400年の檜を育てている森だ。
内田邸をつくったのは、岩木棟梁(とうりょう)のもと、常時4人の大工がいた。
瓦は淡路島で焼かれたもの。山田修二さんの焼いた瓦。
カーテンは、テキスタイル・デザイナーの安東陽子さん。
道場の床下にはオルガヘキサを敷きつめた。備長炭の4倍の吸収力があり、水分、悪臭そして電磁波まで吸収するという。
さらに、エネファーム。家庭用燃料電池コージェネレーションシステム。都市ガスなどから燃料の水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電する。その発電の際に生まれる熱で給湯もまかなう、配電ロスの少ない合理的システム。
「凱風館」は9ヶ月かけて無事に竣工。2011年11月12日のオープンハウスには、なんと400人以上が参加したのでした。
いやはや、こうやってプロの職人に建てられた家に住んでみたいものです。まあ、それは無理としても、見学くらいはしてみたいです...。
(2020年3月刊。960円+税)

2020年6月26日

先生も大変なんです


(霧山昴)
著者 江澤 隆輔 、 出版 岩波書店

全国一斉休校。あれって、本当に必要だったんですか。いったい、どんな状況になれば、そうするのか、その基準は設定されていたのでしょうか。専門家の意見も十分きかないまま、首相官邸のなかの「情報」でアベ首相が独断したのではありませんか...。そして、「3蜜」を避けると言いながら、学校を再開したら40人学級に戻るって、何なんですか。せめて20人以下学級にしたらどうなんですか。共産党は教員を10万人増やしたら実現できるし、1兆円かければ、可能だと発表してましたよね。イージスアショアだって1兆円近かったし、F35なんて、1兆円ではすみませんよ。辺野古も同じです。そっちを止めて、日本の子どもたちの将来のために使ったほうが、どれだけ日本全体にとって良いことか、あまりにも明らかではありませんか...。
この本は、小・中学校での教員経験のある著者が、学校での教員の労働の実際を語り明かしています。読めば読むほど、アベ政権はお金(みんな私たちの納めた貴重な税金です)の使い方が間違っていることを知らされ、怒りが全身にみなぎってきます。
日本の教員は、いま、歴史的にも世界的にも、かつてないほど忙しい状況に置かれている。教員の置かれている苦しい状況は、教員志望を減らしていて、それが現場で教育の質の低下を招いている。
教員志望の低下がひどいのは、なにより「維新の会」が牛耳る大阪に顕著です。「維新の会」は、マスコミ受けすることばかり大げさに言いたてて、教員と子どもをなおざりにしています。学校に成績をつけて競争させるなんて、気狂いじみています。まったくの間違いです。子どもたちが楽しく伸び伸び勉強できるようにしましょうよ...。
一般的な教員は、朝7時半までに学校に出てくる。
昼休みは休憩時間どころか子どもたちと談笑しながら様子を観察する、貴重な時間。
トイレを巡回し、日誌チェックを怠ることはできない。
学校は、一般企業では考えられない「常識」によって支えられている。
そもそも教員には「残業代」という概念がない。教員にとって、「労働時間」なるものは、あってないようなものにすぎない。ごく最近までタイムカードのある公立学校はほどんどなかった。
教員が多忙やストレスから精神疾患にかかって病気休職に至る人が年に5千人をこえている。
2011年から小学校で英語教育が始まった。私は英語の早期授業には反対します。英語より国語力をしっかり身につけるほうが先決です。
学校の大変な実態を教えてくれる本です。コロナ禍にある休校のあとです。焦ることなく、子どもたちがゆとりをもって伸び伸び勉強できるようにすることが求められています。
(2020年3月刊。1800円+税)

2020年6月13日

「薔薇はシュラバで生まれる」


(霧山昴)
著者 笹生 那実 、 出版 イースト・プレス

1970年代の少女漫画の制作現場の実況レポート・マンガです。よく描けています。
スマホなんてもちろんありませんから、固定(黒)電話と口コミでアシスタントを確保します。アシスタントになるのは、マンガ家を志望する中学生や高校生たちです。みんな若いので、マンガ家だって20歳そこそこ、なので3日間徹夜なんて平気です。若い女性たちがカンヅメになって1週間、お風呂にも入らない生活を送るというのですから、その壮絶さはたとえようもありません。途中の差し入れはケーキでなく、おにぎりが歓迎されました。それくらい時間に追われた生活だったのです。
スマホもあり、作業環境も整備されている現在は、毎日シャワーを浴びて、寝る前の1時間は洗顔とスキンケア、睡眠も7時間とれるのが当然だということ。それにアシスタントは在宅でも十分可能。
まあ、それがあたりまえなのですが、1970年代の少女マンガ高揚期は、そんな余裕なんかなく、みな必死だったというわけです。
ただし、それだけに、1970年代のアシスタントは尊敬する作家のすぐそばにいて、その悩みや愚痴も聞きながら製作過程を身近でのぞけるという醍醐味もあったわけです。
著者は20代から30代のころ、いくつかの作品をいくつもの雑誌にのせていたのですが、やがて引退したのでした。
そもそもは、小学6年生で美内すずえのマンガに出会って大ファンになって、中学生になってからは毎月欠かさず、ファンレターを出し続けた。中学3年生のときに自作のマンガを投稿して、佳作と銀賞を受賞した。そして、中学3年生の終わる春休みにあこがれの美内すずえに出会った。高校3年生で、マンガ家としてデビューした。
ところが、アシスタント生活に追われ、自分の作品をなかなか手がけることができずに時がたっていた...。なんだか、それもよく分かる気がします。
私は少女マンガは、ほとんど読んでいません。同郷・同世代の萩尾望都はかなり読みましたが...。
このマンガを読むと、「シュラバで生まれる」という意味が、画像としてよくよく伝わってきます。ちょっと体験したくない「修羅場」です。
漫画家の笹生那実として、32年ぶりの仕事だったとのことですが、そこに描かれている若々しい、はつらつとした女性陣に圧倒され、うらやましさでいっぱいでした。面白いマンガです。ぜひ、あなたも読んでみてください。
(2020年4月刊。1091円+税)

2020年6月10日

住民主権の都市計画


(霧山昴)
著者 岩見 良太郎・波多野 憲男ほか 、 出版 自治体研究社

弁護士5年目くらいから10年間ほど区画整理をめぐる住民訴訟にずっと関わってきました。区画整理というから、はじめのころは何か道路を拡幅し、住宅地を前より住みやすくするための技術的な手法というイメージがありました。ところが、実は、とても政治的に運用されている行政手法だということを理解するようになりました。
そして、この本によると、世間には、もう区画整理の時代は終わったという人もいるようです。現実に、たんに換地操作によって、局部的な土地の入れ替えにすぎない事例もあるようです。
以前は、区画整理に反対ないし異議申立する住民運動がしきりに全国で起こりました。
「自分たちは、住むために土地をもっているんだ。売るために土地をもっているんじゃない」
住み続ける住民にとっては、区画整理で資産価値が上がったからといって、小住宅地にも負担を負わせるのには無理がある。庭を削ったり、住宅まで削ったりして「宅地利用の増進」は考えられない。そして、区画整理後には広い道路に面するようになったからといって、利用価値を損なう強い減歩は無茶であり、理不尽だ。なので、ノー減歩、ノー清算を住民の多くは望んだ(望んでいる)。
ところが、今や高齢化がすすむなどから住み続けるのが難しい状況が生まれている。やがて処分の時代がやって来る。
区画整理が実施されたあとの宅地は、ミニ開発地よりは、相対的には高く路線化評価される。
区画整理の認可状況は、1972年度に350地区1万3千ヘクタールをピークとして、その後2003年度からは100地区を下まわり、また、2017年度には、住民と「市」とは、お互いに助けあうこともなる。
区画整理をめぐる単語(キーワード)として、8コ。再開発、まちづくり、道路、清算金、駅宅地、探地減歩、住民運動くり出す、これをテキスト・マイニングをして解析する。すると、初期には、都市計画の技術知に関わる傾向があった。1995年あたりを境にして、「実践知」に変化してきている。住民の公共観は確実に「技工」から「実践」へ変遷しているように思われる。あとは、再び「協働」志向について国民的公論が交わされるような出来事が起こるのを待つしかない。よく分かりませんが、区画整理の手法も位置づけも変化しているようです。
区画整理の歴史をふまえた研究書の貴重な一冊だと受けとめました。
(2019年10月刊。1600円+税)

 町のあちこちにアガパンサスの花が咲きはじめました。わが家の庭にも咲いています。小さな青い花火のようで、まさに夏到来となりました。
 日曜日に孫と一緒にサツマイモの苗を植えつけました。この秋が楽しみです。鳴門金時などです。
 さらにチューリップを植えていた一区画を掘り起こして夏の花を植える準備をしたら、腰と左肘が痛くなり、いつものマッサージにかけ込んで、身体をほぐしてもらいました。こんなときは残念ながら身体の老化ぶりを実感させられます。

2020年6月 9日

「森友事件」の真相


(霧山昴)
著者 渡辺 國男 、 出版 日本機関紙出版センター

モリ・カケそしてサクラときて、またモリ(森法相)とカケ麻雀(黒川)があり、安倍首相をめぐる黒い霧があまりに多くて何が何だか覚えきれなくなっています。
「森友事件」とは不動産鑑定価格9億5600万円もの国有地が学校法人森友学園にタダ同然で払い下げられた、前代未聞の事件である。
なぜ、この土地が国有地になったかというと、大阪空港に近く、航空機が着陸する飛行ルートの真下にあたるため騒音公害がひどく、国が買収して住民が退去していったから。
豊中市が土地の半分を14億円で国から購入して、中央公園として整備されている。なので、問題の土地も14億円での売買もありうるのに、なぜか1億3400万円で買い戻しという特約つきで売買された。
なにかおかしいと思って調査を始めた人がいた。木村真市議(無所属)だ。
塚本幼稚園では、園児たちが「教育勅語」を暗誦する。そして「愛国行進曲」やら「軍艦マーチ」などの軍歌まで唱和させていた。そして、運動会では、園児たちが、「安倍首相ガンバレ、安保法制国会通過よかったです」と唱えた。
この動画は私もみましたが、腰を抜かしそうになりました。こんな時代錯誤の偏向教育が今どきの日本の幼稚園であっているなんて信じられませんでした。親たちはどうして黙っていたのでしょうか、不思議です。
そして、森友学園の籠池泰典理事長の正体が明らかになった。日本会議の有力メンバーだった。
2015年9月5日、安倍昭恵夫人は、「名誉校長を引き受けました」と記念講演で語った。はじめ「安倍晋三記念小学校」とされていたのを、首相になったので、「瑞穂(みずほ)の國記念小学院」として、安倍首相の昭恵夫人が名誉校長に就任した。
ところが、森友学園は小学校の設置基準を満たしていなかった。それを「クリア」したのは大阪の維新の会の力だった。安倍晋三と松井一郎とは「愛国」教育で意気投合する仲なので、便宜が図られたようです。
鑑定価格が9億5600万円だったのを1億3400万円で売却したのは、地中のごみ撤去費用に8億1900万円かかるという「理由」だった。いったい、8億円もかかる「ゴミ」の撤去とは何なのか...。
結論から言うと、そんなものはなかったのです。要するに、「首相案件」として特別扱いされたのでした。この渦中にいた昭恵夫人の秘書をつとめていた谷恵子氏は沈黙を守った報償としてイタリア大使館へご栄転してしまいます。他方、近畿財務局でつじつまあわせをさせられた赤木氏は悩んだあげくの自死に至ります。 まさしく「天国と地獄」の世界です。
さらに籠池夫妻は逮捕され、泰典氏は長い勾留生活を余儀なくされて現在、刑事裁判の被告人席に立たされています。でも、被告席には、もう一人、昭恵夫人とそのバックにいる安倍晋三首相本人が不可欠です。そこまで追い詰めたいものだと本書を読んで改めて思ったことでした。
ともかく、目まぐるしい世の中ではありますが、軽々しく忘却してはいけない事件であることには間違いありません。
(2020年3月刊。1400円+税)

2020年6月 5日

国会をみよう


(霧山昴)
著者 上西 充子 、 出版 集英社

国会中継というのは、一般的にちっとも面白くありません。とくに時間的に多い与党質問とそれに対する安倍首相の答弁なんて、見るだけ時間のムダという気がしてきます。だって、ちっとも目新しい話は出て来ず、ひたすら安倍首相お得意の自画自賛のオンパレードなのですから、聞いているほうが気恥ずかしくなってくるだけですので...。
ところが、野党の質問に対する安倍首相や菅官房長官の答弁には、ときに面白いものがあります。もちろん、いつも木に棒をつぐような素っ気ない答弁の連続ではあるのですが、いかにも答えていない、話をそらしていることが見え見えだったり、ときとして答弁不能に陥って立ち往生し、沈黙の時間が続いたりするからです。
そこで、国会中継の、そんな面白い場面をそのまま街頭で再演してみたらどうか...。
思うだけならだれでもできますが、著者たちは、それを本当に実演したのです。すごいことです。本書では、その経過と苦労話が語られています。
国会パブリックビューイングの街頭上映は、夕方から始める。あたりが暗くならないと映像が見えにくいから。1時間ほどの街頭上映で、集まった人に「柿の種」を途中で配り、それをつまみながら参加してもらう。
著者は論点ずらしの答弁を「ご飯論法」と名づけたことでも有名です。福岡在住の紙谷高雪氏(先日の福岡市長選に立候補しました)と流行語大賞を共同受賞しています。「ご飯論法」とは...。
Q、朝ごはんは食べなかったんですか?
A、ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)。
要するに、話をそらしてごまかす答弁です。
スクリーンの横に腕章をつけた弁護士が立っていると、かえって道行く人の足を遠ざけてしまうという指摘があり、ハッとしました。そんなこともあるんですね...。
音はむやみに大きくしない。スクリーンの前で落ち着いて聞いていられる音量に調節する。スクリーンの横に主催者は立っていない。
5分間立ちどまって見てくれることを目ざす。5分間立ちどまった人は、10分、15分と見てくれることが多い。そんな人にはうしろから近づいて説明したり、リーフレットを手渡す。
与党が強行採決しようとして、野党が抵抗する場面は、むしろ嫌悪感を招かれてしまうので、街頭での上映は適しない。
渋谷のスクランブル交差点で上映したときには、あまりに通行人が多すぎて、立ちどまって見るのは難しかった。
切り貼り編集はせず、そのままの「やりとり」を上映する。これで印象操作だという批判はかわせる。
「野党は反対ばかりしている」
「野党はだらしがない」
「野党はパフォーマンスばかりしている」
よく言われるが、それは実際の国会審議を見ていない人が言っているもの、あるいは実際の国会審議に目を向けさせないために、あえて誤って印象を与えようとしているもの。
私は、まったくそのとおりだと思います。今の政府・与党がひどすぎるのを、「どっちもどっち」などと言って、政府・与党をカバーしようという論法でしかありません。
いまの安倍政権は、6月17日までの国会の会期を延長しないことにあらわれているとおり、問題が表明化しないよう、国会そのものをできるだけ回避し、批判の材料を与えないようにしている。予備費として10兆円を計上して、それを国会で審議しないなんて、とんでもないことです。
この上映は著しく通行の妨げとなるようなものではないので、デモ行進と車道を歩くのと違って、道路使用許可をとる必要がないので、許可はとっていない。なーるほど、ですね。
みんなが、もっと国会審議をみてほしいという願いから、地道に上映活動を続けている著者たちに心からエールを送りたいと思います。
私たち国民は、もっと怒らなくてはいけないし、それを投票所に足を運ぶことを含めて、行動で示さないといけないと強く思います。
(2020年2月刊。1600円+税)

2020年6月 4日

ゴーン・ショック


(霧山昴)
著者 朝日新聞取材班 、 出版 幻冬舎

カルロス・ゴーンとはいったい何者だったのか。日産(ニッサン)という自動車会社はどんな会社なのか、取材班が綿密な調査を遂げて明らかにしています。
ニッサンはトヨタと違って、モノづくりで突出したものはなく、またカンバン方式という独特のトヨタ生産方式もない会社だ。
少し前までニッサンは塩路一郎という労組委員長に会社全体が牛耳られていた。ニッサンの入社式で塩路は社長の次に挨拶し、社長をボロくそにけなした。塩路は恐怖によってニッサン労組そして会社を統治・支配した。カルロス・ゴーンも同じ手法をつかった。
カルロス・ゴーンは、1954年にアマゾンの奥地の町で生まれた。その父親は通貨偽造・神父殺害で逮捕されたらしい。
ゴーンは6歳のとき、父親から離れ、母・姉とともに母の生国のレバノンに移り住んだ。レバノンでフランス式の教育を受け、17歳で単身パリに渡った。そして、エリート養成のグランゼコルの一つに入学した。ここでは成績優秀で、卒業後、ミシュランに入社した。そして、ブラジルに派遣され現地の会社の再建に成功。その次は、アメリカでも、見事に会社を再建させた。そのあとミシュランからルノーに移った。
ゴーンがニッサンのCOOに就任したのは1999年6月のこと。
コスト・カッターの異名をとるゴーンの絶頂期は2006年ころまでのこと。倒産寸前だったニッサンが、ウソのように業績が好転し、2006年3月期決算まで、6期連続で過去最高益を更新した。
ところが、やがてゴーンの周辺から経営幹部たちが一人、二人と距離を置くようになった。
ゴーンが良かったのは2006年ころまでで、その後は、明らかに変な人事が増えていった。ゴーンのご機嫌とりの人間が重用されるようになり、かつて熱狂的に崇拝していた「神」への信仰が揺らぐのは意外に早かった。
2008年9月、リーマン・ブラザーズが破綻した。このとき、ゴーンも巨額の損失を出したようです。ニッサンの売上高は前年比で2兆円以上も減り、純損益は9年ぶりに赤字転落した。
2015年、ゴーンはリタ夫人と離婚し、翌16年に今のキャロル夫人と再婚した。この結婚披露宴がベルサイユ宮殿で開かれ、その費用をニッサンの負担にしたのです。
ゴーンの生活は非常に派手になり、「家庭中心、自分の財産中心」となった。
ゴーンは東京に来るのは1ヶ月のうち、せいぜい1週間ほどで、来日しても仕事を2日したら、あとはキャロル夫人と一緒に遊んでいた。
そして、ゴーンを脅かすような部下は放逐し、帝国の拡大を目ざした。
ゴーンはルノー本社の社長も兼ねていたが、ルノーはフランス政府が出資している会社でもある。そして、ゴーンは、フランスの若き大統領のマクロンと折りあいがもともと悪く、年収20億円のゴーンの強欲さをマクロンは苦々しく思っていた。
当初のゴーンの逮捕容疑は8年間の合計91億円もの巨額の報酬を有価証券報告書に記載せずに隠していたという金融商品取引法違反。そして、続いて、ニッサンのお金を私的に流用したという特別背任罪。こちらも50億円とか、信じられないほど巨額だ。
ゴーンが逮捕される前、2018年春ころから、ゴーンの不正についてニッサンの社内調査が始まっていて、10月にニッサン幹部と検察(特捜部)が協議を始め、やがて司法取引の合意が成立して、重要書類を検察が取得し、11月19日にゴーン逮捕に至ったという経過のようです。ニッサンの西川(さいかわ)社長はゴーン寄りと見られていたため、ゴーン逮捕の1ヶ月前に知らされました。
ゴーンが釈放されたあと、日本をプライベート・ジェット機で脱出したことが今ではルートをふくめて明らかになっていますが、そんな逃亡を助けるプロがいることも初めて知りました。
独裁者は永遠でないことを痛感しますが、その追放までの長い期間の犠牲者が受けた苦難をしのぶ必要もあると思いながら、読みすすめました。ニッサンの製造現場に働く人々、そしてニッサン車を販売し、保守点検・整備する人たちのことを考えたら、何十億円もの巨額のお金をマネーゲームにつぎ込み、その損を会社に埋めあわせさせようとするというのは許せないと思ったことでした(ゴーンさん、本当に無実なのですか...)。
400頁をこえる長編力作なので、私も勢いをつけて一日で読了しました。
(2020年5月刊。1800円+税)

2020年6月 2日

サル化する世界


(霧山昴)
著者 内田 樹 、 出版 文芸春秋

思想家であり武道家である著者が日本社会を鋭く切りつけています。
著者は団塊世代の最後の世代です(1950年生まれ)。東大仏文を卒業しています。フランス文学を専攻するというより、フランス語に書かれているものなら、何でも対象としていたとのこと。おおらかな時代だったようです。カミュも研究対象でした。今、コロナ・ウィルスのおかげで、カミュの『ベスト』が注目されています。私にはやはり『異邦人』です。
私は、弁護士になって以来、ずっとフランス語を勉強しています。ちっともうまく話せませんが、私には、フランス語を通して、世界へ門戸を開いておきたいという強い願望があります。それが、毎日毎朝、フランス語の書きとりにいそしむ根拠です。
安倍晋三は、日本の過去20年間の政治文化の劣化の「果実」だ。彼を見て、私たちは深く反省すべき。彼を生み出し、表舞台に押し上げたのは、私たちだ。彼を支持する人が今も4割もいる。そんな支持する人たちに「キミたちも、いろいろ辛いんだよね」と語りかけなければいけない。
彼らの言い分をきちんと聞き、自由な論議の場で、彼らの欲求を部分的にでも受け入れ、部分的にでも実現していく。そうしないと、これまでも今も安倍晋三やら維新を支持している市民たちの支持は得られない。非常に辛いことだし、うっとうしい。でも、これをやるしかない。「あんたら、頭おかしいよ」、なんて言っても何も始まらない。
アメリカ合衆国憲法は、そもそも常備軍の存在を認めていない。うひゃあ、ちっとも知りませんでした...。常備軍は、必ず為政者に従い、抵抗権をふるう市民に敵対することをアメリカ市民は経験的知っていたからだ。このように常備軍をもたないことを規定した憲法をもちながら、アメリカは世界最大の軍事力を誇っている。
フランスは、戦勝国として終戦を迎えてしまったため、敗戦を総括する義務を免除された代わりに、もっと始末におえないトラウマをかかえこんだ。
イタリアは、文化的には戦勝国であり、1945年7月に日本に宣戦布告したフランスはド・ゴールというカリスマがいたが、イタリアには、カリスマがいなかった。
 凡庸(ぼんよう)な知性においては、常識や思い込みが論理の飛躍を妨害する。例外的知者の例外的である所以(ゆえん)はその跳躍力にある。
 本当に大切なのは、「心と直感」ではなく、「心と直感にしたがう勇気」なのだ。そのとおりです。この「勇気」こそが、最後に求められるものなのです。
 成熟するとは、変化すること。3日前とは別人になること。
 いつもながらの鋭い指摘に出会うと、胸の奥深くまで短刀を突き刺されて、ハッとする気分を味わうことができます。
(2020年3月刊。1500円+税)

 ジャガイモを掘りあげたあと、今度はサツマイモを植えようと思い、いったん深く掘り起こして、コンポストに入れていた枯れ葉や生ゴミを埋めました。クワとシャベルを使っての久しぶりの力仕事なので、腰が痛くなりました。今は午後7時まで明るいので、7時にやめて風呂場に直行しました。
 庭のアスパラガスは、そろそろ終わりのようです。カンナの黄色い花が咲いて夏の訪れを実感しました。

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