弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物(昆虫)

2018年10月 1日

昆虫のすごい世界

(霧山昴)
著者 丸山 宗利 、 出版  平凡社

これは確かにすごい。昆虫って、こんなにすごい存在だったのか・・・。驚嘆、感嘆、そして溜め息さえ出てきます。だって、すごすぎるのです。人間が万物の霊長だなんて、聞いてあきれます。世の中、上には上がいるものなのです。
いったい何がそんなにすごいのか・・・。それにはこの大判の写真をぜひ手にとって眺めていただくのが早道です。色といい、形といい、奇想天外です。
そして、素人には撮れない写真がたくさんあります。チョウやハチが飛んでいる一瞬が見事に写真に撮られています。
さらに驚くのは昆虫の極彩色の身体の表面です。金・緑・青の繊細なグラデーションとして、小さなハンミョウの皮膚が拡大されています。思わず息を吞んでしまします。ゾウムシやチョウの身体を覆っている色とりどりの突起には、いったい誰がこんなデザインをしたのか、不思議です。
クワガタの大きな鋏(はさみ)は、見る者を圧倒するだけの迫力十分です。
そして、チョウの産みつける卵の、なんと可愛いこと。黄色・水色・茶色の粒々。そして天敵対策なのか長い柄でぶら下がっている卵もあります。
いもむしコレクションには、色も形もさまざまなイモムシたちがずらりと並んでいて壮観です。
秋になって、トンボが飛びかっています。いったい羽を動かさずに空中を漂い続けられる秘密は何なのだろう・・・。そして、トンボは何を食べているんだろう。
ギンヤンマ、オニヤンマを見ると、子どものころのように心が高鳴ります。赤トンボを見ると、なんとなくセンチメンタルな、メランコリックな気分です。
いやあ、すごい写真集です。でも、実は、現物を大きく拡大した写真のオンパレードなのです。実際には何ミリしか体長がないのを、A4サイズまで拡大して見せてくれるのですから、いかにもありがたい話です。
先日、私が欠かさず見ている『ダーウィンが来た』で小笠原諸島の海にすむ奇妙な生き物たちの姿を思い出しました。
ミクロの世界に、こんな不思議なワールドが広がっているのですね。
2400円(消費税は別)ですので、せめて図書館に購入してもらって、眺めてみてください。
(2018年7月刊。2400円+税)

2018年7月 1日

昆虫学者はやめられない

(霧山昴)
著者 小松 貴 、 出版  新潮社

裏山の奇人、徘徊の記、というサブ・タイトルがついています。まさしく奇人ですね、ここまで来ると・・・、正直、そう思いました。
カラスはとても賢く、その時の状況によって柔軟に行動を変えることができる。カラスは、目的を果たすための選択肢をいくつも持っているから、他の鳥と比べて、生きるためとか、自分の子孫を残すためとか、生物として最低限やり遂げなければいけないこと以外のことをする余裕がある。だから、ムダなことをできるようになったわけである。カラスが公園の滑り台にのぼって滑る映像があるが、たしかに、このときカラスは遊んでいる。
カラスは現代の都市に生きる二足歩行恐竜そのものと言える。
あるカラスは、仲良くなった著者に歌をうたって聞かせてくれた。左右に体を揺らしつつ、お辞儀をするように頭を下げ、「ヲン、カララララ・・・」というしゃがれ声を繰り返し発して見せた。カラスは人間を識別して襲いかかるそうですね、怖いです。
ニホンマムシは、本来はおとなしくて争いを好まないが、やるときはやる。攻撃は素早く、咬みついた瞬間、相手の反撃を避けるべく、すぐに離す。
無毒のヘビであっても、何んでも咬みつくヘビの口内には破傷風菌などの危険な雑菌類が常在している。そこで、ヘビを扱う著者は定期的に破傷風ワクチンを接種している。
アズマキシダグモのオスは、自分が食うでもない獲物をわざわざ捕えて、丁寧にラッピングまでして、それを抱えてひたすらメスを探し求めて歩く。
交接の時間が長ければ長いほど、オスは自分の精子をより多くのメスの体内に送り込むことができる。エサに食いついているあいだ、メスは比較的オスの振る舞いに無頓着になるため、より大きくて食べ終わるのに時間のかかるエサを用意してメスに渡せば、それだけ長い時間、オスは交接を許される。
ガの魅力は、なにより多様性のすさまじさにある。日本だけでもチョウの10倍以上、4000種以上はいるし、毎年、新種が見つかっていて、いったい何種のガが日本にいるのか判然としない状況だ。
アリというのは、もとを正せば、進化の過程でハチから分かれた分類群であって、いわば地下空隙での生活に特殊化して飛翔能力を失ったハチのような存在だ。だから、アリがハチのように毒針をもっていても何ら不思議ではない。アリは世界に1万種ほどいるが、基本的にすべてのアリが毒針をもっている。
信州に九州そして関東を転々としてきた若き昆虫学者の貴重な研究成果が面白く語られている本なので、楽しく読み通しました。
(2018年4月刊。1400円+税)

2017年12月25日

昆虫の交尾は味わい深い


(霧山昴)
著者 上村 佳孝 、 出版  岩波科学ライブラリー

昆虫の交尾の研究をしている学者がいるのですね・・・、驚きました。いったい、それが何の役に立つのか、なんて野暮な質問はしないでおきましょう。
じつは、昆虫の交尾器のもつ形の不思議に魅せられて研究しているのです。それは昆虫の進化の歴史を反映するものでした。いったい、どんな・・・。
オスとメスは、どう違うのか・・・。卵をつくる側をメス、精子をつくる側がオス。
では、卵と精子の違いは・・・。鞭毛(べんもう)のない、泳げない精子をつくる動物がいる。そこで、大きな配偶子(卵)をつくるのがメス、小さな配偶子(精子)をつくるのがオスなのである。
昆虫のもっとも古いやり方では、精子の授受は間接的。シミ類がそうである。コオロギやキリギリスの交尾は、多くの場合、メスがオスの背後から背中に乗る。
オスの交尾器の腹側は、メスの交尾器の背中側にかみあうというのが昆虫の多くのグループで原則となっている。
生物全般において交尾器の進化は速い。形のなかではもっとも変化が速いと考えられている。交尾器を見ない限り、種を見分けられない。1000万種もいる昆虫たちは、それぞれオンリーワンの交尾器をもっている。
セイヨウミツバチの新女王は最大で17匹ものオスと交尾してから巣づくりを始める。その交尾のとき、オスは手持ちの精子のすべてを新女王に渡してしまい、交尾器の柔らかい部分が破れてショック死してしまう。
ブラジルの洞窟に棲むトリカヘチャタテは、なんとメスがペニスをもっている。オスの側にはペニスにあたる構造は一切なく、そのかわり、メスペニスのトゲ束を受けとめるポケットがある。トリカヘチャタテの交尾時間はとても長く、平均して50時間にも及ぶ。その間に、精子を含む巨大な精包がオスからメスへ渡される。オスは精子だけでなく、大量の栄養物質もあわせてメスに与えると、メスはたくさん交尾するほど、子の数が増えることになる。逆にオスは栄養補給のために次々に複数のメスと交尾するのは難しくなる。オスの獲得をめぐって、メス同士が競争するケースもある。
いやはや学者の世界って、こんなにも奥深いものなんですね・・・。
(2017年8月刊。1300円+税)

2017年11月 4日

昆虫こわい

(霧山昴)
著者 丸山 宗和 、 出版  幻冬舎新書

昆虫がこわいというから、地球上にいる凶暴でこわい昆虫の話かと思うと、さにあらず。昆虫を愛しすぎてこわいというのです。いやはや、地の果てまで、寝食を忘れて昆虫さがしの旅へ出かけるのです。まさしく昆虫少年がそのまま大人になったというわけです。
それにしても昆虫って、本当に不思議な形と色をしていますよね。万物の創造主は、なんでこんな妙ちきりんな形と色をした生物(昆虫)をこしらえて地上に置いたのでしょうね・・・。
ところで、「昆虫こわい」は、いい虫に出会うコツだと著者は言うのです。なぜか・・・。昆虫採集は、ほとんど運であり、「あの虫を見つけてやる」と期待するほどダメ。その気迫が虫を追いやってしまう。逆に、「あの虫はこわい」くらいに自分にウソをついて、無心になって初めて見つかるもの。
毎日が「小学生の夏休みの延長」という日々を過ごしている著者の面白くてタメになる新書です。カラー写真がふんだんにあって、まるで採集現場に一緒にいるように思えてくるのが不思議です。
ツノゼミというのは、まさしく信じがたい姿をしています。なんで、こんな格好をしているのか、不思議でなりません。まるでオスプレイのようなヘリコプターです。
アマゾンの森に入りアリを求めてさまよい歩いて遭難しかかってもいます。目印に置いたつもりの白い紙がアリにたちまち食べられ運び去られてしまったのです。
ホタルの光より何倍も明るいヒカリコメツキという昆虫がいるそうです。何匹か集めたら本が読めるレベルだといいます。
サシガメに刺されると、感染して数十年後に心臓や消化器に異状が発生する。しかし、その治療法はない。うひゃあ、こわいですね・・・。
「ムシヤ」の著者が、どれだけ「昆虫こわい」なのかは、最後の「後遺症」を読むと、よく分かります。
昆虫探しを始めると、毎晩3~4時間の仮眠をとるだけ。というのは建前で、実は3時間も寝ていない。灯火採集をしていると、「いつ、すごいツノゼミが来るか」「いつタイタンが来るか」とドキドキしている。すると、その昂りがベッドに入っても冷めず、どうにも寝付けない。
最終日には、ほとんど死にそうになりながら、それでも採集を中断することはできなかった。そして、日本に帰国しても、その状態が続く。いくら疲れて眠っても、3時間ほどで起きてしまい、虫たちを思い出して、目が冴えてしまう。
そこで、著者は思い切って診療内科を受診した。
「南米での調査があまりに楽しくて、そのときの気持ちの昂ぶりがよみがえって、短時間しか眠れないのです・・・」
医師は、あまりに変わった訴えを聞いて、怪しんだ。著者は睡眠薬をもらい、2ヶ月かけてやっと正常に戻った・・・。
いやはや、これこそ典型的な虫屋の絶頂状態なんですね・・・。すばらしいです。人生の生きる目標、ここにあり、ですね。虫が嫌いな人以外には、絶対おすすめの新書です。
(2017年7月刊。1000円+税)

2016年9月 4日

つちはんみょう

(霧山昴)
著者  舘野 鴻 、 出版  偕成社

ヒメツチハンミョウという小さな昆虫の一生が大きく美しく描かれた本です。子ども向けの絵本ではありません。科学絵本です。写真以上に微細に色と形が大きく再現されます。
メス(母親)は4000個もの卵を土の中に生みつけます。1ヶ月後、幼虫がふ化して、地表に出てきます。そして、コハナバチに乗って花にたどり着き、次にヒメハナバチの巣のなかに入りこみます。ヒメハナバチの幼虫を食べ、花粉団子を巣のなかで食べて大きくなります。そして、ヒメハナバチの巣を出て、地上に出て飛んでいきます。
写真もありますが、幻想的な絵として描かれていますので、ツチハンミョウの短い一生がすごく長いものに感じられます。4000個の卵のうち、親になって子どもをもうけるのは、ごくわずかなのです。
それにしても、自力では飛べない幼虫たちが、花にしがみついていて、たまたま飛んできたコハナバチにしがみついて、生きのびるとは、なんと偶然をあてにした生き方でしょう。
でも、人間の一生も偶然性に大きく左右されていますよね。ツチハンミョウの偶然を利用した生き方と、果たして、どれだけの違いがあるのでしょうか・・・。
よくぞ、これほど微細に観察して絵本にしたものです。そのご労苦に敬意を表します。
(2016年4月刊。2000円+税)

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