弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

タイ

2015年12月18日

タイ、混迷からの脱出

(霧山昴)
著者  高橋 徹 、 出版  日本経済新聞出版社

 私はタイのバンコクに10年ほど前に一度だけ行ったことがあります。仏教を信じる人が多く、おだやかな人々の暮らしが営まれているという印象でした。個人的には、繁華街の路上でフットマッサージをしてもらい、心地良かったことも思い出します。
ところが、そんなバンコク中心部をデモ隊が占領したり、果ては暴動の現場となったり、バンコクとタイへの印象をすっかり変えなければいけない事態が頻発しました。言わずと知れた、タクシン派と反タクシン派の抗争です。激しい政争というのは理解できるのですが、暴力的な占拠や衝突、そして軍部によるクーデダまで起きると、私の理解をはるかに超えてしまいます。
この本は、タイの政治の内情を新聞記者らしく紹介しています。
民主主義のルールを無視し、議会政治をないがしろにした、力任せの「街頭政治」がまかり通ってきたのが、ここ数年のタイの状況だ。
タクシン派は「選挙がすべて」と叫び、国民の多数の支持を受けたという権力の「正統性」を主張する。それに対して、恩赦法案のような多数派の横暴は、権力行使の「正当性」を欠くと反タクシン派は訴える。
タクシン政権の圧倒的な議席数におごった強権的な政治姿勢や不透明な政策プロセス、一族や取り巻きの企業に露骨に利権誘導する金権体質が、官僚や企業経営者、知識人、そして都市中間層など保守勢力の反感を招いた。
2014年10月の時点で、タイに住む日本人は6万4千人。これは、アメリカ、中国、オーストラリア、イギリスに次いで5番目に多い。そして、タイに進出している日本企業は4600社。バンコクの日本人学校(小・中学)は、3000人の小・中学生徒が通う、世界最大規模だ。
外国からタイへの投資額の6割を日本が占める。
日本に来たタイ人は、2013年に45万人、2014万人に66万人。
タイで売れる新車の9割は日本製。和食や日本アニメも大人気。
タイの中心部を流れるチャオプラセ川を一般名詞の「川」と呼んだのが川の名前だと勘違いした。
タイの都市部の識字率は96%。タイが「アジアの工場」として発展したのは、この識字率の高さと無関係ではない。
タイでは華人が積極的に同化することもすすんでいる。現在のタイで、華人への偏見、差別は、まったくない。
1976年、タマサート大学の構内で抗議デモをしている学生たちへ警察隊が無差別発砲して、46人の死者を出した。血の水曜日事件と呼ばれる。その後、森に入った学生闘士は3千人にのぼると言われた。
2001年2月、51歳のタクシン首相が誕生した。漢字で丘達新と書く。警察士官学校を首席で卒業し、警察官となった。副業としてコンピューター関連の仕事をし、ケータイ分野に乗り出し、通信王と呼ばれるほどに成功した。タクシン人気は、農村振興と貧困対策を基にしている。これによって世帯収入の低いコメ農家の多い東北部、北部の有権者に熱狂的に支持された。タイも貧富の格差が大きい。11.1倍。日本は6.5倍。
仏教国のタイでも、最南部の3県では、住民の9割がイスラム教徒で占める。タイでは、クーデターのたびに憲法の廃止と制定を繰り返し、最近も12回目の憲法制定がなされた。
タイでも汚職は状態化している。政治軍人も政治実業家も、汚職体質という点では、同じ穴のムジナだ。
王室の「中立性」が揺らいでしまった。王室は反タクシン派と寄りみられるようになった。
ジャーナリストとしての視点がありますので、概説としてはいいのですが、もっと本質的な突っ込んだ分析がほしいと思わせる本でもありました。
(2015年9月刊。2600円+税)

仏検(フランス語検定試験)の結果を知らせるハガキが届きました。11月に受けた準一級の試験です。予想どおり合格でした。自己採点で87点でしたが、なんと2点も上回っていて、89点です。合格点は73点ですから16点もオーバーしています(150点満点です)。いつも控え目で謙虚な私の性格から自己採点が低かったとつぶやいたところ、「えっ、なんのこと、、、」という反応がありました。つい本当のことを言っただけなのですが、、、。1月下旬に、口頭試問を受けます。難行苦行が続きます。

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